ラヴ・ユー・フォーエバー

 秋ですね。晴れた日の秋の空は、本当にさわやかです。でも、朝晩は少し冷え込みます。
 お腹につく風邪が、少し流行っています。喘息の季節ですが、発作はそれ程多くありません。
 遠くアフガニスタンでは、戦争が始まっています。子ども達の頭上を戦闘機が行き交い、爆弾の嵐が吹き荒れています。テロへの報復は、これしかないのでしょうか。戦争の犠牲者は、いつの時代でも無防備な子ども達です。
 さて今月のマンスリーニュースは、松任市の「医師会だより」に「ラヴ・ユー・フォーエバー」という絵本に感動して書いた一文をご披露いたします。今月は、これにてご容赦ください。


 「ラヴ・ユー・フォーエバー」(永遠にあなたを愛します)・・・結婚式の文句の様ですが、そうだとしたら白々しいと感じる人がほとんどではないでしょうか。私はそんなことはありませんが(!)、結婚生活が長くなるに連れて、そんな思いはどこへやら。生活と仕事に追われて気が付いてみたら、シワだらけのおじんとおばんが向き合っている。向き合っていればまだ幸せ。近頃は、気が付いたらおじんはおばんに逃げられて独りぼっち、というのも珍しくありません。
 「ラヴ・ユー・フォーエバー」・・・この言葉が母親(父親も)の子どもに対する気持ちならば、納得できるという人がほとんどであってほしいと思います。実を言うとこの言葉は、アメリカの絵本作家、ロバート・マンチという人が15年前に書いてベストセラーになった本の表題なのです。日本では1997年9月に第1刷の訳本が発行され、2000年12月には第24刷にもなっています。
 「ラヴ・ユー・フォーエバー」・・・母親は子どもが成長しても、赤ちゃんの時と同じ愛情を持って接することが出来る。父親と母親の愛情表現は少し違うかもしれませんが、子どもを思う気持ちは同じです。赤ちゃんも2歳から3歳へ。昼間のいたずらっ子も眠りについています。「この子のお陰で気が狂いそう」というお母さんも寝顔を見たら「アイ・ラヴ・ユー」です。子どもの成長は早いものです。いたずらっ子から、あっという間に反抗する息子へと成長します。でもその息子も寝ている時、母親にとっては同じです。「アイ・ラヴ・ユー いつまでも アイ・ラヴ・ユー どんなときも わたしが いきている かぎり あなたは ずっと わたしのあかちゃん」こう歌いながら母親は息子を抱いてあげます。しかし、その息子も更に成長し結婚して子どもに恵まれる頃、母親は次第に年老いていきます。息子を抱き上げようにももう力がありません。息子は母を抱きながら歌います。  「アイ・ラヴ・ユー いつまでも アイ・ラヴ・ユー どんなときも ぼくが いきている かぎり あなたは ずっと ぼくのおかあさん」母と子の絆は、子どもが幾つになっても、親が幾つになっても永遠のものということだと思います。
 「ラヴ・ユー・フォーエバー」・・・この絵本が作られた15年前、私が開業する数年前、日本では心の病気を持つ子供たちが増えてきた時期に重なっています。次第に景気が悪くなり母親も父親も忙しくなってきました。子ども達は、早くから保育所に預けられるようになり、親子で見つめ合う時間が少なくなりました。現在もその延長線上にあります。国が考える「エンゼルプラン」も「すこやか家族21計画」も、子ども達から母親を遠ざける方向にむかっています。子ども達の気持ちを代弁したい小児科医にとって、子育て支援も病児保育も「ラヴ・ユー・フォーエバー」という基盤の上に立った計画であってほしいと思います。国が、子育て真っ最中の親子に「ラヴ・ユー・フォーエバー」という気持ちが育つ余裕と時間を与えてほしいと思います。
  未来を担う子ども達にとって「ラヴ・ユー・フォーエバー」は、成人後の子育てにも仕事にもその意欲を作り出す基礎になっていると思います。「ラヴ・ユー・フォーエバー」という信頼の欠落が「切れやすい子ども達」や「チャイルド・マザー、チャイルド・ファーザー」を生み出しているのです。未熟な親や子ども達の現状を憂う前に、何事にもそこに至る原因があることを知り、「余裕ある子育て」を社会における最重要課題と受け止めるべきでしょう。なぜなら人類の未来は、今、私たちの目の前で育っている子ども達が作り出すのですから。


 
(参考:ラヴ・ユー・フォーエバー 作:ロバート・マンチ 訳:乃木りか 絵:梅田俊作 M岩崎書店)


   日本小児アレルギー学会に参加して来ました

 第38回日本小児アレルギー学会が、10月6日、7日と北九州市の小倉で開かれました。6日の11時で診療を打ち切らせていただき小松空港から福岡行きの飛行機に飛び乗りました。天気は曇りがちでしたが、小倉はさすが九州、歩いていると汗ばんできます。会場の北九州国際会議場は、小倉駅のすぐ近くにありました。4時からのシンポジウム「小児気管支喘息ガイドライン-現状と展望-」と翌日午前中のシンポジウム「実地医家のための喘息治療の実態」を聴講しました。これらのお話を総合すると「子どもの喘息の治療も、ここ数年で本当に変わってきたなー」というのが実感です。発作を出来るだけ少なくしてQOL(Quality of Lfe:生活の質)を守るというのは変わりませんが、そのための治療がインタール吸入から、気管から吸収されにくいステロイド剤の吸入に次第に変わってきています。副作用の少ない薬で、早期にかつ的確に発作を抑制する。それが、小児気管支喘息の将来をさらに良くするという考えです。

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