ブックスタートをスタート

 サッカーの話題でもちきりの日本国内ですが、如何お過ごしでしょうか。日本の決勝リーグ進出も決まり少し落ち着いた所ですね。景気の低迷を追いやってくれそうなサッカー旋風もいいですが、サッカーの面白さにも目覚めさせてもらいました。
 さて、外来の方も落ち着いています。あんなに流行っていた、おたふくかぜも下火です。水痘と溶連菌感染症、高熱の風邪がぼちぼちという所です。
 さて、今月のマンスリーニュースは、「ブックスタートをスタート」というお話をしたいと思います。

  ブックスタートのこと

 昨年5月のマンスリーニュースで、ブックスタートについてお話しました。覚えておられますか。少しおさらいをしましょう。
 ブックスタートは、1992年、英国のバーミンガムという都市で始められました。この時期、英国では移民が増えて文字を読めない人たちが多くなっていたのです。大学や図書館、さらに公の保健局が協力して、まずは赤ちゃんのいる300家庭に本が配られました。その後この試みの素晴らしさが認識され、民間の会社からの寄付も加わって、現在では英国の92%の地域で赤ちゃんに無料で本のセットが配られています。
 本のセットを受け取った家庭では、本への意識が高まり、家庭で子どもと一緒に本を読む時間が大切にされたことや、時間が多いほど言葉や数字の発達が促されることも分かりました。
 日本でも2000年が「子ども読書年」に当たることから、民間や市町村が協力して、まずは東京都杉並区で試験的に開始されました。その後日本全国でも取り入れる市町村が増えています。
 私もこの運動は大変良いことだと思っています。特に現在のように生後3ヶ月から、保育園に預けられることもあるのですから、お母さんと子どもの絆をしっかりとつなぎ止めるためにも、子どもに本を読んであげる時間ぐらいは守って上げるべきです。その為には公の機関(市町村)が率先してやるべきではないでしょうか。
 石川県内でもある町では、すでに取り組んでいます。本当は松任市でも初めて欲しいのです。予算はかかりますが、それにも増して行政が子育ての味方をしてくれるという事が、どんなにか親御さんの励みになるわかりません。
 角(かど)さん、よろしくお願い致します。

  当院でもブックスタート

 当院でも今年の4月からブックスタートをスタートしました。松任市が始めるまでの橋渡しのつもりですが、健診に来られたお子さん全員にブック・セットをプレゼントしています。
 本の名前は子ども用が「かみさまからのおくりもの」(ひぐちみちこ著、こぐま社)、大人用が「子どもからの贈り物」(ひぐちみちこ著、こぐま社)です。両方ともとても良い本です。機会がありましたら、お読み下さい。ひぐちみちこさんが、「子どもからの贈り物」の「はじめに」として書かれている言葉がすばらしいのでご紹介します。


 
子どもがまだ幼いころのある日、「お母さん、お花はどうして咲くのか知ってる?」と、私に聞いてきました。一瞬どう答えたものかと考えていると、娘は確信に満ちた表情で「あのね、神さまが咲かせるんだよ!」と弾むようにいったのです。
 子どもがだんだん大きくなってくると、その子がもとから持っていたもの、つまり神さまがくださったものが、結局その子の全体を支えていることに気づかされます。植物の種、たとえばひまわりの種は、ほんの指先ほどの小ささなのに、地面に播かれ、水が注がれて、太陽の熱と光を浴びて芽吹き、大きくなると、太い茎に多きな葉が何枚もついて、やがて真夏の暑さにも負けない大きな花が咲きます。あの一粒の種のどこに緑の葉や黄色い大輪の花が隠されていたのかと、その不思議さに打たれます。
 ぐんぐん成長するひまわりを見て、「さあ大変!あの種だけでは足りないぞ。なにか足してやらねば」とはだれも思わないでしょう。あの種ひとつで花開くまで完結するように、はじめからできていることを、私たちは知っているからです。
 人間の子どもの中にも、それだけで完結する実りというものがあるはずです。それをなるべく損なわないようにするのがまわりの大人の役目なのに、後で継ぎ足すことばかりに夢中になって、もとはなんの木だったかわからなくなったり、果ては枯らしてしまったりしてはいないでしょうか。
 そんな悲しいことにならないように、その子が神さまからもらったその子らしさをどうしたら損なわずに生きていけるか、いかに大人がその邪魔をしないで成長を待ってやれるかに心を砕いてほしいのです。そしてその成長を喜んで見守ることが、植物にとっての肥料のようなものではないでしょうか。
 子どもが幼い日に投げかけた問いは、そのことを私に暗示してくれていたのかもしれません。自分が手にしたとても大事な真実を、子どもはときどき惜しげもなく分けてくれます。後になって、そんな子どもからの贈り物に気づく・・・・、子育てはそんなことの繰り返しなのかもしれません。

本当に、本当にそのとうりです。(院長も実感してます。)
   
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