次男坊の喘息

平成15年も4月に入りました。米英のイラク進撃は、首都バグダットに迫っています。その間に多くの民間人の血が流されました。暴力によって得られた平和は本当の平和と言えるのか・・・「大量破壊兵器をフセインから取り戻す」という大義名分の戦争が新たな恨みを生み出し更にテロが加速される・・・そんなことにならないよう祈りたいです。
 戦争が早く終わることを願いながらマンスリーニュースを作っています。
 さて今月のマンスリーニュースは、当院職員の吉田ゆかりが提供いたします。息子二人の子育て経験から、「次男坊の喘息」について心にしみる文章をいただきました。院長は楽なのでうれしいです。喘息の季節に当たって、喘息と格闘中の親御さんに少しでも参考になれば幸いです。


 春うららかな今日この頃、みなさん如何がお過ごしですか?看護師の『吉田ゆかり』です。もう、ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、7年前まで一度、むとう小児科で働いておりました。その後、流浪の旅に出まして、また、昨年の11月に舞い戻って参りました。その間、松任市の予防注射や乳幼児健診に携わらせていただいておりましたので「あらっ?!どこかで見た顔!」と思われた方もいらっしゃるかも知れません。これからもよろしくお願いします。
 桜が咲いて、みんなには、ほのぼのとしたこの4月。
 されど、我が家にとっては昔から恐怖の4月です。なぜなら、『喘息発作が起きやすくアレルギーたけなわの季節』だからです。今日は【アレルギっ子我が家の次男】についてお話ししたいと思います。次男の○○は、15年前の4月、トイレで便器に産み落としそうになったくらい、"スッポーン!〃と産まれました。3200gでした。看護婦さんから「黒金(くろきん)ですよ」と言われた時は「やったあ!」と思いました。『黒金?』そうです。たまたまが真っ黒だったら、その男児は健康優良に育つと昔から言われているってご存知でしたか?ところが、ところがです。生後1ヶ月を過ぎた頃から、体がカサカサになり、まるで"粉ふきいも"状態になりました。2ヶ月に入ると、寝息が「ぜーぜー」と。赤ちゃんの寝息ってこんなんだったっけ?と思ったのもつかの間、それが、喘息発作の始まりでした。それからは言うまでもありません。この15年間、アトピー性皮膚炎・気管支喘息・アレルギー性結膜炎・鼻炎など・・・まあ、にぎやかな症状が出ています。親はもちろんのこと、祖父母やいとこもみなアレルギーもちなので、遺伝的要因はバンバンです。あまり、うれしことではありませんが・・・
 "朝、軽い咳をし始めると夜には入院している"とまあ、これがまた勝負のはやい喘息パターンというか、ひどい年は1年の半分近くを病院のベッドで過ごしました。喘息発作がひどい時は布団に寝ることも出来ません。座った状態が楽なのです。布団を三枚ほど折り重ねて、それに寄りかかるように座って寝たこと、幾晩あったでしょう。でなければ、机にうつ伏せに寝かせます。そうです。授業中の居眠り状態の格好です。日中、おもちゃで遊べているうちはまだいいのですが、ひどくなってくると、しゃべることもできなくなります。水分がとれるかどうかがとても大切です。食欲などは二の次、三の次です。夜中、そっと哲朗の胸に耳を当ててみると、ひゅーひゅーゼーゼーとまあ、にぎやかです。自分も半分眠りながら吸入をするので、口に当てていたマスクがいつの間にか頭に当たっていたなんてことはしょっちゅうでした。これで頭がよくなってくれたらいいなあなんて思いました。まあ、それはありませんが(笑い)。いつまでこんなことをしなければならないんだろう。あせりといらだちでとても情けなくなったこともありました。そんな時って、親の気持ちがしっかり子どもに伝わるものですね。○○が、わめきながら吸入器を投げつけました。「なんで、僕だけいつもこんなことをしなければいけないんや!」それを言われることほど辛いことはありませんでした。が、一番辛く悲しいのは本人の○○だと言うことがイヤというほどこの時わかりました。小学校の卒業式で、ひな壇に上った彼がみんなの前で言ったこと・・「僕が喘息でひどかった時に、夜中寝ないで看病してくれたおかあさん、ありがとう!お陰で僕はこんなに元気になりました。」と。私の目から、大粒の涙があふれ出たことは言うまでもありません。「夜中、咳が出て眠れなかった」と受診される子供さんがおいでます。そんな時いつも、『お母さんも寝られなかったね。しんどいね。』と私は思います。嫌がる吸入をむりやりさせることは本当に辛いです。でも、大事なことはいつの日か必ず、子供はわかってくれるはずです。何でも私たちにお話していただければとても嬉しいです。○○は今日も元気にサッカーの遠征に出かけて行きました。バッグの中には、吸入器と気管支拡張剤をお守り代わりに入れて。


 院長より一言:私も幼児期に喘息でした。夜、祖母と寝ている部屋に母が呼吸の音を聴きに来ると、心配させないように寝たふりをしながらゆっくり息をしました。少しゼーゼーの音が小さくなるんです。母は安心して部屋にもどっていきました。
 子どもはみんな優しさを持って生まれてきます。その優しさをそのまま育ててあげられる様な世界であって欲しいです。そんな世界を子ども達に残したいですね。戦争は憎しみだけを残していきます。

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