子育て支援メッセいしかわ2003

 10月も終わりに近づいています。マンスリーニュースを何にしようかと思いながら締め切りまじかになってしまいました。ちなみに自分で決めた締め切りは月末です。「10月号だから10月中に出せれば良いんじゃない」という身勝手な締め切りです。
 ところで朝夕めっきり寒くなりました。喘息発作も多いですね。今年は久しぶりに起こしたお子さんも多いように感じます。医学の進歩した現代でも人間の健康は季節に左右されるという厳然とした事実は、「人間よ!慢心するなかれ」と言われているように感じます。
 さて、今月のマンスリーニュースは10月12日に石川県地場産業振興センターで開かれた「子育て支援メッセいしかわ2003:みんなでつなごう・子育ての輪」についてご報告します。

  いろいろな催し

 この日、石川県内の市町村ではボランティアの全国大会も開かれていたそうで、市内のホテルも満杯だったとのことでした。
 子育て支援メッセ2003は、今年が2回目の新しい催しでした。地場産業振興センターの敷地内でシンポジウムを初め、子ども向けの手作り体験コーナー、子ども劇場などのミニステージ、子ども達の遊び場や学生さんとのふれあいサロンなど沢山の企画が一度に行われました。
 シンポジウムの初めは、京都の青少年自立支援ホーム「東樹」の龍尾(りゅうお)さんが「地域に安心感のタライを広げる」というお話をされました。印象に残っているのは、子育て支援は待っているのではなく、こちらから一歩踏み出して行うことが大事というお話でした。シンポジウムでは、東京から来られた、「おやこの広場びーのびーの」の代表奥山さんが、母親たちの手で作った「おやこの広場」の活動状況を話されました。子育て中の母親が気軽に集まれる場所を提供することはとても大切なことだと感じました。
 私も、パネリストとして15分ほど「心の病気と子育てについて」のお話をさせて頂く機会を得ました。どうぞお付き合いの程お願い致します。

  喘息から心身症へ

 私が、森本にある医王病院へ赴任したのは昭和56年10月(今から22年前)の事です。大学では、アレルギーグループに所属して主に小児の喘息やアトピー性皮膚炎の治療をを得意としていたので、そこで当時一般的だった重症喘息の長期入院療法をやるための赴任でした。結局、医王病院には7年半勤務しました。着任当初、重症喘息児が年々増していきましたが、3〜4年後がピークでした。治療法の進歩で喘息のコントロールも容易になり外来で充分治療できるようになったからです。喘息児に変わって、入院の必要性が高まっていたのが、不登校を初めとする心の病気の子ども達です。学校へ行けない、家から出ない、食べられないで痩せていく、人前で言葉が出ない、また身体が動かないなど心の病気の子ども達が入院の多くを占めるようになってきました。私も主治医として、コミュニケーションの回復や家族との面談に明け暮れました。時にはカウンセリングの専門家や精神科の先生にも手伝って頂きました。後半の3年程は主に心身症の子ども達との関わりでした。結局、その為にエネルギーを使い果たした感じと、家の事情も重なり開業することになりました。しかし、その数年間の体験は、子どもを育てることの難しさや、人間の心の発達の微妙さを教えて頂く貴重な機会になりました。

  心の健康な発達のために

 何故心の病気は起こるのでしょうか。心身症の子ども達と接するうちに、やはりちゃんとした理由がある事が理解できるように感じました。何か事件が起こるときは必ず原因があるものです。症状の出方はいろいろですが、生まれてからの毎日の積み重ねの中で、自我の正常な発達が促されなかったのだと思うようになりました。心身症の子ども達は反抗期もほとんど経験していないことが多いです。とても手のかからない良い子として親には感じられています。子どもにとっては、自分の気持ちを出せない状況があったということでしょう。家庭が子どもが我が儘を言えない環境だったのかも知れません。家庭内に大人たちの常に張りつめた雰囲気があったら我が儘も言えないでしょう。家族は生まれた子どもが最初に出会う人間です。その人達が楽しい生活をしていなかったら子どもは、生きることがこんなにも気を遣い、苦しいことなのだと思いこんでしまうでしょう。逆に我が儘がすべて通ってしまう環境も異常です。もし、家族がその子に愛情を感じているならば過剰な我が儘は押さえ込まれるはずです。生まれたばかりの子どもはしつけもなく礼儀も知らない動物ですが、親や家族とぶつかり合いながら(切磋琢磨)発達していくのです。学校の成績が良いに越したことはありませんが、数学が苦手でも、その子の個性を認めてあげたいですね。そして、貴方は家族にとって大事な子であることを伝えてください。日々の生活の中でたまには夫婦げんかも大事です。子どもは緊張してよい子になります。楽しいこと6割、苦しいことも4割ある。そのぐらいがいいですね。もちろん、お祭りの臨時お小遣いも、誕生日のプレゼントやお母さんの得意な手作り料理も最高に楽しいことです。楽しみと苦しみと悲しみと・・・その思い出の積み重ねが生きる力を作っていくのです。別に特別なことではないですよね。

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