子ども予防接種週間:3月1日〜7日

 インフルエンザもやや山を越えたという感じの今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。全国では、今年も子どもがインフルエンザ脳症で死亡している事が報道されています。
 インフルエンザは、インフルエンザでも鳥インフルエンザウィルスが東南アジアを中心に見つかっています。日本でも山口、大分などで見つかりました。直接人間には感染しないそうですが、豚を介して人間に感染するウィルスに変化すると言われています。新しいウィルスに対する抗体のない人間にとっては、感染したら死亡するかもしれないという脅威の感染症です。
 さて今月のマンスリーニュースは、感染症流行阻止の切り札である「子ども予防接種週間」についての話題をお届けしたいと思います。

  「子ども予防接種週間」

 日本小児科医会と日本医師会共催の「子ども予防接種週間」は、3月1日から7日までの一週間と決められ創設されました。15年11月21日に発表されたその週間の主旨は「同週間の目的は、保護者をはじめとした地域住民の予防接種に対する関心を高め、特に、諸外国から麻しんの輸出国と批判されている現状を強く認識して、接種率を上げることで、わが国の麻しん根絶を目指す。」としています。さらに「実施期間については、入園、入学前で保護者の予防接種への関心を惹起する時期であり、また、接種漏れを見直すよい時期であることから、3月初旬に設定された。対象は、予防接種法に基づく予防接種、特に麻しんを重点においている。賛同した医療機関、各地域の予防接種センターは、それぞれ協力できる日に予防接種を実施することとし、通常の診療時間に予防接種が受けにくい人にも、土、日、平日の診療時間外に予防接種を行うとともに、種々の予防接種の相談にも応じる体制を取る。」とし、出来るだけ多くの医療機関、予防接種センターに参加を呼びかけたいとしています。「今後は、ポスターやチラシの作成・配布、行政やマスコミとの連携、ホームページ等を活用して積極的にPRする他、16年2月に予防接種をテ-マとして市民公開講座を実施する予定(2月7日に日本医師会館で、すでに行われました)」と、発表されました。

  予防接種の現状

 日本の予防接種の現状はどんなものなのでしょうか。一言で言ってしまえば、大変不十分な状況です。麻しんワクチンを例に取れば、年間数万人の麻しん患者が報告され、年間約80人の幼い命が奪われています。米国の患者発生数が年間100人以下と言われますから雲泥の差があります。1998年8月、米国アンカレッジで33人の麻しん集団発生が報告されました。その感染源をたどったところ、日本から旅行に来た4才児と断定され、日本が麻しんの輸出国ということになってしまいました。大変不名誉なことです。
 麻しん発生を抑える有効な手段は予防接種しか有りません。1才における接種率を95%以上にすれば、麻しんは根絶されると言われます。その為には、国民の一人一人が予防接種に対する正しい知識を持ち、積極的に予防接種をうち、自分の子どもは自分で守るという意識を持たなくてはなりません。
 現在、全国的に「麻しんゼロ作戦」が行われていますが、石川県でも小児科医会が中心となって「石川はしかゼロ作戦」を展開中です。

  麻しんワクチン2回接種

 金沢工業大学で麻しんの集団発生があったことはご存じでしょうか。金沢の高校でも集団発生がありました。「エー、どうして」と思われるかも知れませんがあり得ることなのです。幼児期に接種した麻しんワクチンの効果が切れてきているのです。先進国では麻しんワクチンを2回接種することが常識になっています。ワクチン1回の状況が続けば、高校生や大学生の年代の集団発生がさらに報告されるでしょう。そのウィルスが接種前の乳幼児に感染し犠牲者が出ることは当然の成り行きです。東南アジアの国々でも日本の援助で麻しんワクチンを2回接種しています。どうして日本の子ども達が2回受けられないのでしょうか。いや、お金を出せば当然2回受けられます。しかし、国として国民を守るのが義務ならば必要なワクチンは、公費で接種するべきなのです。少子化を防ぐことが国の重要課題ならば当然、子ども達の命を大事にする政策をとるべきです。子ども達が国の未来を支えることが分かっているなら、子ども達の育つ環境をもっと愛情深く守るのが国の役目です。保育所に頼りっきりの母親、父親とのきずなの薄い子育てが、子どもの心の成長に良いはずはありません。
 「子ども予防接種週間」という日本で初めての試みが、日本の子ども達が本当に大事にされているかどうかを考える機会にもなって欲しいと思います。


日本医師会市民公開講座「予防接種で感染症を防ごう」(2月7日に日本医師会館で開催済み)

この公開講座のビデオが、2月28日(土)午後11時30分〜午前0時40分までの70分間 NHK教育テレビ「土曜フォーラム」で放映されます。是非ご覧下さい。

当院でも3月7日午前中(9-12時)は予防接種のために開院致します。麻しんワクチンが中心ですが、平日に来にくい方は、出来ましたら電話予約後、ご来院下さい。


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