ロタウィルス胃腸炎大流行中

 平成16年も4月に入りました。マンスリーニュースもついに記念すべき150号です。
 さて、「大量破壊兵器をフセインから取り戻す」という大義名分の戦争が、イラクに平和をもたらさないまま依然続いています。安全といわれたサマワに自衛隊も派遣されました。しかし、その安全な場所でも火種がくすぶり出しました。解放されたとは言っても、5人の日本人が拉致されました。さらに、スペイン、ドミニカなどはすでに兵士達を撤退させる方向で進んでいます。まさに泥沼に入り込んだ様相です。イランの人たちが望むように、アメリカが撤退すればすべてうまく行くのか・・・これも分かりませんが、やはり自分たちの国の再建は、自分たちの手でという気持ちを大事にするより仕方ないのかもしれません。

 お腹につく風邪が大流行しています。すでにかかってしまったお子さんも沢山おられると思います。すべてが「ロタウィルス」が原因とは言えませんが、持参してもらった白っぽい便を検査してみると、多くの患者さんでロタウィルスが陽性に出ます。少し遅すぎましたが、このロタウィルス腸炎について勉強しましょう。


     
ロタウィルス腸炎
(別名:冬季嘔吐症・白色便性下痢症・嘔吐下痢症、小児仮性コレラ、白痢などとも呼ばれます)


 
原因は? 

ウィルス性腸炎の中で最も一般的なロタウィルス感染による腸炎です。乳幼児期の冬季下痢症の70%以上を占めると言われます。ロタウィルスには、A、B、Cと型がありますから1回でおしまいとはいきません。数年前からロタウィルス迅速診断キットが売り出され利用されています。このキットはロタウィルスのA型のみ診断出来ますのでBやCは判定出来ません。ですからロタウィルスらしくてもB、Cは診断できないことになります。ロタウィルスは、唾液や便などの排泄物から口に入り、1〜3日の潜伏期をへて下痢が始まります。ウィルスは、1週間ほど便中に排泄されます。この期間中は家で静養出来ればいいですね。他に腸炎を起こすウィルスとしてはSRウィルス、アデノウィルス、エンテロウィルスなどがあります。 

 好発季節は? 

 秋から冬にかけて発生するので、冬季下痢症とも呼ばれています。でも、最近は季節性も薄れてきました。実際、今は紛れもなく春です。

 症状は? 

 白色あるいはクリーム色の下痢便を特徴とします。ひどいときは水様便です。発熱や嘔吐を伴うことも多いですが、時には高熱、頻回の嘔吐ということも経験します。症状は3〜5日で軽快します。

 好発年齢は? 

 生後6ヶ月〜2歳くらいまでに必ずと言っていいほどかかります。当院では、お父さんでかかられた方もおられました。やはり白っぽい水様便でした。お気を付け下さい。
                                                      
合併症は? 

 激しい嘔吐と下痢のための脱水状態です。また、嘔吐や下痢のために身体のナトリウムやカリウムが失われるために電解質のバランスも崩れやすいです。

 治療は? 

 ロタウィルス腸炎と診断されても、インフルエンザの様に特効薬はありません。ひたすら下痢、嘔吐が収まるのを待つより仕方ありません。
 当院での実際の治療は、初期で吐き気が強いときは、吐き気止めの座薬(ナウゼリン)を使って吐き気を抑えることから始まります。下痢がはげしい時でも、下痢止めは使いません。下痢に対しては、整腸剤(ラックB)のみ処方します。下痢を無理に止めると、ウィルスが排泄されずかえって病状が長引くことがあると言われるからです。吐き気が収まれば、下痢として失われた水分を口から充分与えることが重要です。この時、市販のポカリスウェット、アクエリアス、また果汁では糖分が高く電解質が薄すぎて、かえって元気がなくなってしまいます。薬局で市販されている下痢・嘔吐用の電解質液(アクアライト、アクアサーナなど)が最良です。これに似た電解質液(イオン水)は家庭でも作ることが出来ます。(イオン水の作り方→水1000cc + 塩2g:小さじ約3分の1 + 砂糖40g + レモン汁約2分の1をしぼる)子どもが欲しがれば、合間に水を与えてもいいです。 与える場合の原則は、少量(20〜50cc)を頻回に!一度に大量を与えると吐きやすいからです。
 吐き気止めの座薬を使っても嘔吐が激しい場合は、点滴治療が必要となります。泣いても涙が出ない時は、相当に脱水がすすんでいる証拠です。下痢と嘔吐が同時に起こった場合は早めに脱水状態におちいります。赤ちゃんは、脱水が高度になると生命にかかわる事がありますから油断は禁物です。

 お家で出来る事いろいろ

 @下痢が始まったときは、早めのオムツ交換とお湯で便を流して(お風呂場のシャワーが一番かな)、石けんで洗ってあげてください。オムツかぶれの予防になります。
 A少し吐き気がある時は、自家製あるいは市販のイオン水(欲しがれば水でも)を少しずつ飲ませて脱水を予防してください。緊急時は、栄養よりも水分だけ入れば十分です。
 B冷たい飲み物はおなかが刺激されるので、少し温めた方がいいでしょう。
  重症下痢の場合は、牛乳やミルクは中止です。イオン水を欲しいだけ与えましょう。
 C吐き気や激しい下痢で、水分が摂れない時は、まよわず小児科を受診してください。
  
赤ちゃんが泣いても涙が出ない、あやしても笑わない、
             顔面蒼白(青白い)は緊急サイン!

受診時、飲んだ飲水量・便の回数・尿の回数・嘔吐の有無を記録しておくと、治療に大変役立ちます。 お父さん、お母さん、お爺ちゃん、お婆ちゃんよろしくお願い致します。



   
目次へもどる      次ページへ