百日咳が増えています!

       生後3ヶ月になったらすぐDPTワクチンを

 年毎の地球温暖化のためか、今年も猛暑が続いています。新記録更新という報道もされています。昨日(16日)は、40度を超えた地方もあったそうです。テレビで、北極の氷も溶け出しているそうですから本物です。日本沈没も間近か・・・。当然ですが、毎日熱中症の犠牲者が出ています。お年寄りが多いですが、それも炎天下ではなく、室内で亡くなっています。塩分を含んだ水分補給が大事です。番茶、煎茶、水道水には塩分はほとんど含まれません。スポーツドリンクやイオン水が適当です。人間を殺す暑さに、油断しないで対応してください。
 さて、今月のマンスリー・ニュースは、「百日咳が増えています!」というお話です。早期のワクチン接種が大事ですよ。

 最近、予防接種や健診で持って来られる母子手帳を見ていると、DPT(ジフテリア・百日咳・破傷風)三種混合ワクチンを接種していない赤ちゃんが多く感じます。1才健診で来られて接種してないお母さんに聞いてみると、「風邪ばっかりひいてたもんで」とか、「ポリオワクチン、あるいはBCG(当地では集団接種)と時期が重なってしまって、そのうち忘れちゃって」とかいう返事が多いです。DPTワクチンは、生後3ヶ月から接種可能になっていますが、その意味が理解されていないのだと思います。何故、生後3ヶ月なのでしょうか。ジフテリア、破傷風は乳児では滅多にないと思いますが、問題は百日咳です。生後6ヶ月以内、特に生後2ヶ月以内に百日咳にかかるとけいれん、脳症などを起こす頻度が高まり死亡することもあるのです。お母さん、赤ちゃんが生まれ、3ヶ月したらすぐDPTです。3週間たったら2回目も打てます。そして、BCGを打ちましょう。1ヶ月明けて、3回目のDPTです。どうですか。生後6ヶ月までに3回接種出来たでしょう。その後、おもむろにポリオワクチン接種を考えてください。現在、日本にポリオ発生がありませんから急がないで良いです。
 でも百日咳ってそんなに怖いの?私も百日咳の患者さんを治療したことがありますが、何しろ体力が消耗してしまうような咳が3ヶ月も続くんですから家族も大変です。その患者さんは、希望で途中から入院されました。

  百日咳とは?

 さて、百日咳とはどんな病気でしょう。簡単に言えば、「激しい咳が100日と、長期に続く病気です。乳幼児、特に生後6ヶ月以内の場合は合併症として肺炎:10人に一人、けいれん:8人に一人、脳症:500人に一人であり、その結果100人に一人が死亡すると言われています(米国の統計)。生後2ヶ月以内では、肺炎:4人に一人、けいれん:3人に一人、脳症:100人に一人と年令が小さいほど危険です。」
 世界の動向はどうでしょうか。WHO(世界保健機構) の発表によれば、世界の百日咳患者数は年間2,000 〜4,000 万人で、その約90%は発展途上国の小児であり、死亡数は約20〜40 万人とされています。
 
 百日咳にかかるのが多いのは、ワクチン未接種の乳幼児です。潜伏期は、6〜20日間ですが、多いのは7〜10日間です。
 
カタル期(発症後1〜2週間):普通の風邪症状で始まります。薬を飲んでも咳が止まりにくいのですが、百日咳菌に効果のある抗生物質を内服すると咳が軽くなります。
 
痙咳期(けいがきき:3〜6週間):痰を伴わない乾燥した咳が激しくなります。5〜10回ほど途切れなく続く連続した咳き込みで苦しくなり、大きな呼吸をして息を吸い込んだ時、ヒューという特有な音(レプリーゼ)が聞かれます。咳発作は夜間に多く、咳き込みによる嘔吐、チアノーゼ、無呼吸、顔面紅潮・眼瞼浮腫(百日咳様顔貌)、眼球充血などが見られます。他の細菌が付かなければ熱は出ません。
 
回復期(6週間以後):特有な咳き込みが次第に減少していきます。普通は3〜6週間で軽快します。
 結局は6週間+6週間=12週間:約3ヶ月間激しい咳に苦しむ病気です。そして年令が生後6ヶ月以内だと、経過中にけいれんや脳症等の合併症で死亡する事もある怖い病気なんです。
 診断と治療:診断は、特有な咳で疑われます。さらに咽頭の菌を採って培養したり、血液検査で白血球の数、特にその中のリンパ球が増えていれば可能性が高まります。また、血液中の抗体を調べて診断をつけることもあります。最近では、培養に変わってPCR法という細菌のDNAを直接見つける方法があります。費用はかかりますが、早く診断を確定したい時には便利です。
治療は、カタル期早期に、マクロライド系抗生剤を服用すれば、症状は軽くなりますが、典型的な咳が出てからでは効果はありません。ただ、他の人への感染を防ぐために投与は必要です。
 
予防:DPT三種混合ワクチン(DPTワクチン)が有効です。百日咳は、そのPにあたります。何故Pかというと、Bordetella Pertussis菌の感染で起こる病気だからです。ちなみにDはDiphtheria(ジフテリア)、TはTetanus(破傷風)という病気です。
 ワクチンは、第1期初回として、生後3 〜90カ月(標準的には生後3〜12カ月)に3回、及びその12〜18カ月後に追加接種を行い、第2期として11〜12 歳に、百日咳を除いたDT 二種混合ワクチンによる接種が行われています。

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