全国学校保健・学校医大会

 時に秋晴れのさわやかな日がありますが、天候は不順ですね。今週(第3週)も週末は、天気が崩れるようです。外来は、風邪の患者さんも少なめですが、クループという「声がれ」と「犬が吠えるような咳」の出る風邪が例年より多い感じです。また、秋は喘息シーズンと言われますが、やはり多いです。予防治療をしっかりやって、咳や喘鳴(ゼーゼーやヒューヒュー)が出ない生活をしたいですね。出来れば、運動した後の咳や喘鳴も予防しましょう。そうすれば運動嫌いにならないで済みます。いつもの治療をきちんとしてるのに、運動喘息が出やすい時は、主治医にご相談下さい。治療の防波堤を少し高めにすることが必要です。
 さて、今月のマンスリーニュースは、「全国学校保健・学校医大会」です。

  第39回全国学校保健・学校医大会が新潟市で開かれました

 11月8日(土)、日本医師会主催の第39回全国学校保健・学校医大会が、新潟市の朱鷺メッセ 新潟コンベンションセンターで開催されました。メインテーマは、「みつめよう子どもの健康と未来」というもので、子どもと関係するお医者さんの勉強会です。診療の科は、小児科医、耳鼻科医、眼科医、皮膚科医、精神科医、小児精神科医、小児外科医、整形外科医、産婦人科医、歯科医など多くの科の先生方が参加されました。さらに特徴的なのは、学校保健ということで学校の養護教諭はもちろん、多くの学校の先生が参加されていることです。子どもを取り囲む大人たちが、幼稚園から高校まで、その成長の過程で、「こころや身体」の病気に見舞われないよう、力を合わせて守るにはどうしたら良いか、いい知恵はないものかと悩み、いろいろなアイデアを出し合う会と言ったら良いのでしょうか。日本の各地で、同じような問題が出てきている現状に対して、こうやったらどうだろう、こうやったら良かったよ、と情報を交換しあって子ども達が健康で過ごせるよう話し合う訳です。

  どんな発表があったのでしょう

 さて、学校保健でどんな事が問題になっているのでしょうか。発表の内容に沿ってお話します。
(1)学校での整形外科的検診を行ってみました
整形外科専門医の先生方が新潟県のある町で小学校3校919名と中学校499名を検診してみると、最終的に34名が骨や筋肉や関節の病気と診断されました。そのうち、野球肘が8名、側わん症が7名と約半数を占めていました。野球肘は、骨の未成熟な時期の少年野球などで、体力を超えて投球動作をすると起こると考えられています。子どもの運動は、年令に応じて適当なやり方が必要ということですね。

(2)イベント前に心臓検診を行ってみました
京都府では、毎年2月に小学生の駅伝大会が行われています。その前に、全員が心臓検診と整形外科健診を受けることになっているそうです。その結果、心臓検診で、平成18年度は727名中21名(2.9%)、19年度は700名中18名(2.6%)で異常が見つかりました。多分、小学校入学時に全員が、心電図検査を受けているはずですが、イベント前に精密に検査してみると新たに発見された訳だと思います。気を付けないといけませんね。
(3)インフルエンザが流行しているときにどうしていますか
ある県の小中学校で校長先生に、インフルエンザが流行中にどんな対応をしているかとアンケートをとってみました。すると、小学校の41.4%、中学校は35.4%で何らかの措置をとっていました。この措置は、校長先生の権限になっていますが、全部の校長先生が学級閉鎖や部活の中止を行っている訳ではないんですね。一応、養護教諭や学校医の意見を参考にするという事ですが、学習進度の遅れや授業日数減少の方に力が置かれているようです。流行阻止の観点を重要視して欲しい気がしますが。
(4)メタボ対策いろいろ
子ども達の体力が低下している事が問題になっていますが、ある県では、医師会が中心になって、「子どもスポーツクラブ」を設立し、行政、体育協会、スポーツ少年団と協力して子どもから高齢者までの生涯スポーツ活動支援をしているそうです。
またある県では、メタボ対策は、学校保健委員会を活性化することが大事という観点から、教育委員会、保健所、保健師、管理栄養士、PTAなどが、生活習慣・食生活・運動面での取り組みを強化した所、肥満傾向児出現率が低下してきているという事でした。子どもを取り巻く多くの人達の協力が必要なんですね。
(5)障害児の小学校入学支援はどうしたらいいのでしょう
多くは知的な障害は認めないものの、コミュニケーション能力や集団生活での適応に問題をもつことが多く、普通学級への入学が困難になる場合もあります。障害児に対しては、外来での学校関係者や親との話し合いだけではなく、実際に学校に出かけての状況確認や入学時だけではなく継続した学校関係者と家族との連携と支援が大切ということでした。
(6)性教育は、「いのち」を大事にする教育
小学校5年生が出産するという時代になっています。日本の性教育はどうなっているのでしょうか。性教育の仕方についても、教育委員会と医師会では随分違っています。学級指導要領に従って教育するべきという教育委員会と、現実に即したもっと具体的な事も含めた教育が必要なんだという医師会。ピルやコンドームの使い方を教えることが、子どもの性教育にとって必要なのか、やり過ぎなのか。現実には5年生が妊娠している現状で、子どもを取り巻く大人達は戸惑っている様子が浮かび上がってきます。子ども達にその年令に応じた性教育が必要なことは明らかです。大人たちが臆することなく(おどおどする)、命の大切さと生きることの素晴らしさを実生活の中でいつわり無く伝えられたら、それが本当の性教育だと思いまが、いかがでしょうか。


    
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