新型インフルエンザ発生

 地球上、特に人間世界は大混乱です。アメリカに始まった景気後退の余波を受けて、全世界で不景気が蔓延しています。失業者が増加し、経済の建て直しが叫ばれている状態でしたが、さらに、新型インフルエンザ発生が加わりました。やはり北アメリカ、アメリカの南にあるメキシコが始まりです。豚のインフルエンザウィルスが、人に感染し、そのウィルスが人から人に感染することが分かって、感染者が増加、死亡例も出ていることから「新型インフルエンザ発生」という情報が世界を駆け巡りました。いつかは起こるだろうと予測はされていましたが、不景気で生活に困っている「この時期にかよー」という感じです。

 世界保健機構(WHO)は、4月24日アメリカ・メキシコで人間への「豚インフルエンザ」の感染が報告され、約60人が死亡した疑いがあると明らかにしました。アメリカ保健局は、国内で見つかったウィルスは、豚、鳥、人の混合型でこれまでに見つかっていないタイプで、「ヒトからヒト」への感染が起こっている可能性があること、更にアメリカとメキシコで新型ウィルスによるインフルエンザが流行する恐れが有ることを伝えました。WHOによる更に詳しい情報では、メキシコ市周辺だけで800件の感染が疑われる報告があり、うち57人が死亡。この他メキシコ中部サンルイポトシでも24件の報告があり3人が死亡しているという。メキシコ国内では、多くの学校が学級閉鎖や休校に追い込まれた。
 アメリカでは、カリフォルニア州とテキサス州で合計7人の感染報告があったが、全員が回復したという。当局は感染者や彼らと接触した人々の検査を行い、メキシコからサンプルを取り寄せて感染経路の特定を急いでいる。感染力はまだ不明としている・・・・

 
 これが最初にもたらされた世界への情報でした。ついに新型インフルエンザの流行が始まったのです。人類が恐れていたスペイン風邪の再来は、意外な格好で地球上にもたらされました。鳥だ、鳥だと思っていましたが、豚でした。後から次第に明らかになって来たことは、鳥インフルエンザほど、強毒性ではないことです。全身の細胞を破壊して急激な死を招くスペイン風邪のような新型インフルエンザを予測していた人類にとっては、大変ありがたいことです。しかし、弱い毒性と言いながらも、若い世代の人たちの命がポツポツと奪われていることは事実です。感染も世界に拡大しています。死亡者も徐々に増えています。「パンデミック=世界的大流行=感染爆発」に迫りそうな勢いです。このマンスリーニュースを書いている時点(5月8日夜間)の夕刊に大きな見出しで「邦人の感染初確認」と、シカゴに住んでいる日本人6才男児が新型インフルエンザにかかっていた事が報道されています。日本人で初めての感染例として大きくとりあげられていますが、本人は重症化することもなく回復しているそうです。良かったです。
 8日朝刊に載っていた世界での感染拡大の様子を示した上の地図をご覧下さい。死者は、感染者が多いメキシコとアメリカのみです。カナダも201人と多いですが、死者は出ていません。報道では、毎日患者数は増え続けています。いつになったらピークを迎えて下降しだすのか予測がつきません。やはり、手洗いとマスクと隔離をして、感染を防ぐより仕方ないのでしょう。もし、日本で検疫をたまたますり抜けて患者さんが国内に侵入し、症状がひどくなって見つかったとしたら、すでに誰かに感染させている可能性もあります。接触者を探し出して白黒がはっきりするまで隔離することになるでしょう。自分が、新型と予測出来れば、一般の診療所ではなく、各県に設置されている「発熱相談センター」(下記:24時間対応)へ電話でご相談ください。どの病院を受診したら良いかなど、詳しくご説明致します。
 日本国内へ侵入しないまま流行が終わってしまうのか、或いは、すでに入り込んでいるのか、これから侵入予定なのか??? いずれにしてもこの状態が長期に渡れば、検疫所も検査施設も入院対応の病院も疲れきってしまわないかと心配です。皆が疲れた頃に侵入するという、最悪の事態にならないよう、油断は禁物ですが、無理のない勤務態勢で長期戦に臨む必要があるでしょう。

 その後:5月8日、カナダからアメリカ経由で成田空港へ帰国した日本人3人が、新型インフルエンザに感染していたことが確認されました。大阪府在住の40代の高校教師と高校生2人で、カナダへのホームステイから戻って来たところでした。楽しいはずの外国への旅が新型インフルエンザとの出会いになるとは本当に気の毒です。それから、10日間が経過しましたが、新型インフルエンザは大阪から神戸へと拡大し患者数は170人を超えました。この数はアメリカ、メキシコ、カナダに次いで世界で4番目です(世界の統計では感染者は8,800人:死亡74人に昇っています。)幸いにも日本での死亡者はいませんが、抵抗力の弱った状態の人が感染すれば、死亡者が出てもおかしくありません。大阪府や神戸市では、発熱センターでの対応も目一杯ということで、一般診療所でも新型インフルエンザを診察することになったようです。この場合、一般の患者さんへの感染が防げるようにして診察する体制が重要ですが、隔離の部屋や時間帯を変えての診察などが必要になるでしょう。

      目次へもどる     次ページへ