気になる病気ひとくちメモ   

 四月は新しい始まりの月です。進学、就職、転勤や転居。多くの別れがあり、また新しい出会いがあります。子供達も、不安と期待の入り交じった複雑な心境の時期です。親として、子供の様子に気を配ってあげて下さい。
 むとう小児科医院も7年目を迎え中学生になりました。なかなか難しい年代ですが今年度もよろしくお願いします。
 さて、今月のマンスリーニュースは、なるほどと思った病気の知識についてお話しします。
水いぼ(伝染性軟属腫)の治療
 ポックスウィルスによる皮膚の病気です。体幹や手足の皮膚の薄い所に粟粒大の丘疹として出現します。丘疹はしだいに大きくなり、湿疹のある皮膚に出来やすいために、掻くことによってうつり、数が増えていきます。自然に治ることもあると小児科の教科書には書いてありますが、6ヶ月から数年と長いので、その間に数が増え、身体全体に出来てしまうこともあります。ピンセットでむしり取る治療が痛いので、小児科医は数が少ないと、ついもう少し待ってからと思ってしまうのです。皮膚科の先生は積極的に除去することを主張します。なぜなら小児科から皮膚科へ来る頃には、数がずいぶん増えてしまっているそうです。命に関わることはないのですが、見ためが悪いので親には気になります。今後は、患者さんの気持ちを考えて早めに除去しようと思います。手に負えない場合は皮膚科医に紹介します。
アトピー性皮膚炎のイソジン療法
 乳児から成人まで幅広く増加しているアトピー性皮膚炎が、社会問題になっています。医学的治療から民間療法まで多くの治療法が試みられていますが、これだというものがありません。最近、小児科医が考えたイソジン(消毒液)療法が流行しています。皮膚炎を起こしている皮膚は、細菌に弱くなっていて、調べてみるととびひを起こすブドウ球菌がたくさん見つかります。細菌が付いていると、かゆみが増して掻くことも多くなり皮膚炎が更に増悪してしまいます。イソジン療法は、毎日風呂上がりなどに、皮膚炎の場所に塗って殺菌し、すぐ洗い流すという簡単な治療法です。当院でも細菌が付いている様子のある患者さんに行っていますが、効果があることは確かです。しかし、手術などでよくイソジン液を使っている先生方は、時にイソジン液でかぶれたり、強い反応を起こすことがあるので慎重な意見です。実際当院の患者さんで、耳後部のイソジン療法後、イソジンの付着したあたりの髪の毛が抜けるということがありました。 


   新しい治療法は慎重に!
           

水ぼうそう(水痘)の治療
 水痘はありふれた病気ですが、まだワクチン接種が一般的でないために、ときどき流行をくり返しています。子供によって発疹の出方は色々ですが、多いときは全身くまなく発疹だらけということもあります。発疹は少しかゆみを伴うため、かきこわして手に付いた細菌が感染し、深くえぐれることもあります。こんな傷は大人になるまで残ってしまいます。実際、中学生の女子で鼻の横に5ミリ程の跡が残って、親に形成手術をせがむということがありました。最近、ウィルスを殺すアシクロビルという薬が、水痘で許可されました。発疹の数が少ないときは必要ありませんが、多いなと思ったときは処方しています。値段が高いのがたまにきずですが、後からの形成手術を考えたら安い物です。効果は抜群で、4日間投与で発疹があまり増加しないで、大きくもならず、スーッと引いていく印象です。しかし、何よりも大事なのは水痘にかからないよう、早めにワクチンを接種しておくことです。

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