予防接種を受けよう!
新予防接種法施行後2カ月を経て   

新予防接種の考え方
 予防接種の考え方は時代と共に変化してきました。昭和23年に出来た予防接種法は数回の改正を経て、更に昨年10月に改められ、今年の4月から実施されました。その考え方の基本は、予防接種は原則として個別接種でおこなうということです。つまり、戦後50年、日本の医療状況も次第に落ちついてきたので、集団で受ける予防接種から、患者さんが納得して受ける(インフォームド・コンセント=説明と同意)形に変わってきたのです。変わったきっかけとして、予防接種による事故が誰の責任なのか、医師か、患者か、国かという消極的な態度が見え隠れしているようにも思います。しかし、文明国の仲間入りをした日本としては、国として出来るだけの救済を保証しながら、未来をになう子供達の予防接種を国民の納得できる形で勧めていかなければなりません。問診や診察で事故を予想することは、完全には出来ないでしょう。また、現在市販されているワクチンも改良されたとはいえ完璧ではありません。例えば、麻疹(はしか)ワクチンも100万人に一人の割で脳炎を起こすと言われています。免疫不全などの病気は別にして、それが誰に当たるか神様にも分かりません。私は、心配そうなお母さんに、宝くじに当たったことがある人は止めましょうと言っています。
なぜ予防接種は必要なのか
 予防接種のおかげで多くの伝染病が減り、幼い命を落とすことも少なくなりました。何となくもう予防接種はいらないような気になってきます。でもちょっと待ってください。 昭和50年、百日咳ワクチンの副反応が問題になって、ワクチンを一時中止したことがありました。すると百日咳が増え始め全国的な流行を起こしてしまいました。また、記憶に新しいところでは、ロシアでジフテリアの流行があり数千人の患者が出たことが報道されていたのをご存じでしょうか。これらの事実によって、私たちの健康が多くのワクチンによって守られていることが分かるでしょう。
予防接種の種類と副反応
 新しい予防接種法では、次の7つの病気にに対してワクチンを接種することになっています。
 百日咳、ジフテリア、破傷風
 ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎
 小中学校で行われていたインフルエンザワクチンは廃止され任意接種になりました。
結核予防法によるツ反、BCGは、これまでどうり行われます。ポリオとBCGは、当分の間集団で行われます。これらの予防接種は受けるべき年令幅が決められていて、もし副反応で健康を害した場合には、医師に責任が無いと認められ、予防接種との因果関係が明らかな場合には救済が受けられます。
 副反応が特に問題となったのは、種痘や以前の百日咳ワクチンが使われていた時代でした。種痘は世界から根絶され、百日咳ワクチンも新しいのに変わりました。また、他のワクチンも改良され、重篤な副反応を起こすこともまれになっています。
副反応の種類          
 ワクチンの副反応の種類としては、その直接作用とアレルギー作用があります。直接作用としては、接種した当日か翌日に出て、2〜3日で消えます。DPTワクチンを打った後、特に3回目や4回目に腕が腫れることはよく見られます。時に上腕全体が腫れることがありますが、湿布くらいで翌日にはひいていきます。
 アレルギー反応としてよく知られているのは、卵アレルギー児の問題です。麻疹とおたふくかぜワクチンは、ニワトリの胚細胞を使って作られています。強い卵アレルギー児の場合には、ワクチン液で皮内反応をしてから接種することが推奨されています。しかし実際には、ワクチンに含まれるほんの微量の卵成分に反応を示す子供はまれと言っていいでしょう。卵そのものは除去してても、卵成分を含んだ物を食べていて大丈夫な子供は問題ないと考えてください。
任意接種のワクチンも受けよう
 おたふくかぜや水痘は、予防接種法のワクチンとはなっていません。しかし、このような比較的軽い病気に対しても、予防接種を受けておきたいという人が増えています。ワクチンで防げる病気は、出来るだけ予防接種を受けたいものです。


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