気管支喘息注意報   

 暑く長かった夏も、過ぎ去ってしまえば懐かしい気もします。それを追うように秋が急ぎ足に近付いてきました。小児科の外来も夏かぜにかわってゼーゼー、ヒューヒューを訴える子供が多くなりました。人間の生活がいかに季節に左右されているか本当にビックリします。そこで今月は、子供の喘息について勉強したいと思います。
最近の小児喘息

小児喘息の発病年齢昭和51年の金大での調査では3才台までに73%の子供が発病していました。現在では更に低年齢化していると思われます。

 喘息の治療も年毎に進歩しています。10年程前まで全国の国立療養所の小児病棟は、重症喘息の長期入院児で混雑していました。私の勤務していた森本にある国立医王病院でも多いときは、20 人程の子供達が闘病生活を送っていました。併設の小中学校があったので、入院は1年間が普通でした。しかし、この10年、抗アレルギー剤や吸入療法が著しく進歩しました。それにつれて年々入院児は減少し、現在は1人か2人というとこだそうです。だからと言って喘息児がいなくなったわけではありません。最近の小児喘息は、低年令化が目立ちます。特に乳児期の湿疹に続いてゼーゼー、ヒューヒューいう子供が増えてきています。
発作は夜作られる

喘息の起こりやすい時間帯

 「歴史は夜作られる。」大変有名な言葉ですが、私にはよく理解できません。しかし、喘息発作が夜起こりやすいことは確かです。喘息児の家族と長年接して来て、喘息が夜起こるということが、他の子供の病気と大変違うことだと思っています。喘息が母源病と言われたり、心の病気だと言われたりする背景にはこの夜問題を見逃すわけにはいきません。なぜなら、夜は人間にとって寝る時間だからです。子供が重症の喘息児だとすれば、親は毎日毎日起こされます。安眠できない日々が続くのです。基本的安眠権を犯されるのです。いくら愛情深い親でも、親子の関係がギクシャクしてくるのは当然でしょう。逆に子供は親に迷惑をかけていると感じながら、つらい夜を過ごしているのです。お互いに眠られぬ夜を過ごしながら、しだいに子供に拒否的になったり、過保護になったりしてしまうのです。また親はそういうダメな自分を責めてしまい、心の中は複雑な様相を呈してきます。その親の気持ちが子供に伝わり、子供の心は不安定になり発作を・・・アー すべて発作が悪いのです。親は自分を責める必要はありません。喘息という敵を知って、てなずけ、コントロールし、上手につきあっていくことで悪循環から抜け出せるのです。
喘息の起こりやすい季節

喘息発作は9月にピーク

喘息発作の好発時期は、春と秋です。子供によっては、夏や冬が多いということもありますが、数は少ないでしょう。金大時代に調べた統計でも、4、5、6月と9、10、11月に発作が多いという結果でした。特に秋は発作が増えています。秋に多い理由として、ダニが増加することや、天候の変化が激しいことなどが言われています。また、日によって特に外来の喘息患者さんが増える日があります。
例えば、台風が日本へ近ずいて来ている日などは多くなります。台風は低気圧なのですが、近ずく時点では日本は高気圧におおわれていて発作を起こし易くなります。こんな訳で、秋は治療の防波堤を高くして準備をする必要があります。飲み薬や吸入を忘れないようにしましょう。


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