一言が大事       

 今年の冬は雪も少なく、過ごしやすかったですね。ただ、年末に流行ったインフルエンザは、むとう小児科開業以来の猛威でした。学校でのワクチン接種が中止されたことや、o-157の流行に現れているように感染症に対する人間の抵抗力低下(?)、また抗生物質の効かない細菌が増えているなど多くの問題がからんでいるのかもしれません。
 さて、三月は虫も穴から出てくる季節です。子供達や青年達も新しい環境へ旅立ちの準備をしています。そんな不安な時期にはもちろん、日頃から親は人生の先輩として子供達に一言言わなくてはいけません。しかし、言い過ぎた言葉や、親の立場からだけの言葉は子供の心に残ることはないでしょう。本当に一言でいいから子供の立場に立った印象に残る言葉をあげたいものです。今月のマンスリーニュースは、その一言の大事さについてお話しします。
  祖母の一言       
 私が高校生の頃、家は嫁姑の戦いで緊張状態が続いていました。祖母と同居したのが確か小学校入学前の事だったと記憶していますから、かれこれ十年もたった頃です。小学校時代には、母の実家から遠い道のりを何日間か歩いて登校した思い出があります。自分の愛する家族が争うことが、いかに悲しいことであるか・・・子供心に人生の複雑さを噛みしめました。その後も時折、貯まった物がこらえきれずに噴出するように、母と祖母の涙を伴った言い争いが起こります。慣れっこにはなっていると言っても、自分の部屋で机に向かいながら聞くとはなしに耳をそばだてていると、次第に気持ちが落ち込んでいくのが分かります。時には、自分がとてつもなく恐ろしいことをしでかしそうな状態になることもありました。そんなある時、祖母が、「一彦は、よく我慢してるね。」とつぶやきました。私の一触即発の心が次第に萎えていくのが分かりました。私の気持ちがどんな状態であるか、祖母は年の功で感じていたのでしょう。
 家族の争いの中で、一人でも部外者でいられるはずはありません。言葉はなくても、子供達はちゃんと感じています。もし心当たりがあったら、子供の立場に立った一言をかけてあげてください。無口な子ほど沢山ため込んでいます。私も昔は無口でした。これ本当です。
 
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