『電子メール交換診療日記』について

 北陸の短い夏も終わりました。あとは秋から冬へと一直線です。出来れば秋晴れの澄み切った空を沢山味わいたいですね。今年こそ白山の紅葉でも見に行きましょうか。しかし、秋は喘息の季節でもあります。お心当たりの方は予防治療を忘れないようにしましょう。さて今月のマンスリーニュースは電子メール交換診療日記についてお話します。聞き慣れない言葉ですが、当然のことです。何故なら私が作った言葉ですから。しかし、これからの医療が変わっていく一つの大きな力になる可能性があると思っています。

 再びインターネット

 昨年 月末に開設したむとう小児科のホームページをご覧になった方もおられると思います。それに質問やご意見を書き込めるのですが、時に東京や福岡の遠方から、また近くは金沢、松任から電子メールがやってきます。多くは(アレルギー疾患に限らず)お子さんの身体のことが心配で相談されるメールです。ある金沢在住の若いご夫婦が赤ちゃんの湿疹について相談されてきました。その時の交換電子メールの様子を再現してみます。

 交換電子メール事始め

 初めは今年の一月末にお母さんからの質問でした。

 母:5ヶ月になったばかりの男の子なのですが、顔に湿疹ができてなおりません。体にも1 から4 四方のものができています。体の方はそれぞれ小さい湿疹があり、かさかさしています。心配でたまりません。知り合いからそちらのことを聞き、インターネットで検索中見つけることができました。近いうちに診てもらいに伺います。よろしくおねがいします。

 院長:ホームページを見ていただいて有り難うございました。最近は、赤ちゃんの湿疹が本当に増えています。なかなか特効薬はありませんが、上手に付き合って行くことは出来ると思います。ではまた、お会いした時に。

 2通目もやはりお母さんからです。

 母:先日メールさせていただいた です。早くお目にかかりたいのですが、上の子が発熱して、なかなか熱が下がらず、伺えません。かといって、下の子の湿疹もとても気になります。しかたがないので、私の代わりに主人に行ってもらう事にしました。明日、5日の午後に伺う予定です。よろしくお願いします。

 3通目は当院が休みのためのお詫びのメールでした。(気を使わせまして申し訳ありません)

 母:昨日メールした です。すみません。今日の午後は休診でしたね。明日、6日の午後こそ、伺います。何度も申し訳ありません。

 院長:二通目のメールを見て安心しました。水曜日午後は休診ですので、お気をつけ下さい。では、六日に。

 4通目は外来受信後にいただきました。外来でアレルギーの皮膚検査をしました。

 母:昨日は診察ありがとうございました。検査してもらったところは特にかわりはないようです。しいていえば、 番(犬毛)が少し赤いかなという程度です。ミルクの事なのですが、先生のすすめてくださったもの、前に飲んでみて、下痢を起こしています。昨日も言ったと思いますが、現在まだ、薬を飲んでいます。どうしたらよいでしょうか。後、おでこのかさかさした所に、なにか、保湿のローションとか、クリームとか塗ったほうがいいでしょうか。それとも、放っておいていいでしょうか。

 院長:昨日はご苦労様でした。「のびやか」で下痢をしたとのことですので、止めて下さい。時にそういうこともあるようです。下痢止めのお薬ですが、良くなれば止めて下さい。おでこのかさかさは、ローションやクリームより(乾燥させますから)、風呂上がりに非ステロイド軟膏かワセリンぐらいが良いと思います。

 翌日、不安の積もったお母さんから5通目のメールをいただきました。

 母:先生、昨日もありがとうございました。お忙しいところ、なんどもすみません。また質問なのですが、「のびやか」を飲めないとなると、今までのミルクを飲ませていくことになるのでしょうか。そうすると、状態は今までとかわらないでしょうか。今、薬をぬっているのですが、この先もずっと、薬をぬりつづけることにならないでしょうか?薬はくせになると聞いた事がありますが・・・かさかさのところ塗るという「非ステロイド軟膏」は、先生のところで処方していただけますか?

 院長: 「のびやか」は、明らかに下痢をすると言うことになれば、中止せざるをえないと思います。これは、一度では分かりませんから、もし出来るようなら下痢の治った状態でもう一度確認されたらどうでしょうか。確実になれば、普通のミルクを飲ませて下さい。これでやはり湿疹が悪くなるようなら、ザジテンやインタールなどの抗アレルギー剤を食事前に内服させる治療法があります。後は、年齢的に次第に良くなっていきますから、あせらないで下さい。「非ステロイド軟膏」は当院でもありますが、どこの医院でも置いてあると思います。ご質問に答えられたでしょうか。ではまた。

 その日のうちに6通目のお礼のメールをいただきました。

 母:早速のお返事ありがとうございます。ミルクの件、様子を見ながら、やってみます。薬、薬とあまり考えないようにしました。もし、なにかあったら、またメールさせていただきます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

 4日後再び不安になられたお母さんから7通目のメールをいただきました。

 母:先生、お元気でいらっしゃいますか。その後、息子の湿疹ですが、まだ、ミルクも変えていませんし、生活は前と同じなのですが、薬を塗らないと、じくじくになってきます。薬をぬるとさーっとおさまってしまうのですが、これでは、やはり繰り返しになってしまい、そのうち薬づけになってしまうのではないかととても心配です。薬をやめるということはできないのでしょうか?他に打つ手はないでしょうか?あと、ミルクですが、もし「のびやか」でまた、下痢するようだったら、他になにか、よいミルクはありますか?もし、そちらに伺った方がよいのならいつでも伺います。よろしくお願いします。

 院長:大変ご心配の様子ですが、赤ちゃんの湿疹は月毎に良くなりますから、焦らないでください。先日もお話ししたように、一つ一つ実行してみて下さい。まずは、「のびやか」を飲ませてみて下さい。「のびやか」以外では、以前使っていた、やはり明治のエレメンタールフォーミュラーやエピトレスというミルクアレルギー用のミルクもあります。味はあまりよくありません。治療として、ステロイド軟膏を出来るだけ少なくするために、抗アレルギー剤(ザジテンやインタール)の内服が良いと思います。こちらはほとんど副作用がありませんから。ではまた。

 納得したと思っても、親御さんの不安は尽きません。今回、電子メールが、診療の不足を補う大きな手段であることを認識しました。少しずつ医療世界が変わりつつあります。

  
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