こころの病気
子供に増えているアレルギーや心の病気
子供の病気は時代と共に変化しています。
私が卒業した20年前は、細菌感染による肺炎や髄膜炎が多く見られました。それが、栄養伏態が良くなった最近では、重症な感染症は少なくなって、半面、アレルギー疾患や子供の心の病気が増えています。
外来で時々、子供なりに何か大きな悩みを抱えた様子に出会うと、子育ては大変だなと他人事ならず感じて、こちらも悩んでしまいます。
日本の社会は今、子供達の周りにも、いじめ、不登校、心身症など、多くの問題を抱えています。とは言っても、子供を育てるのはいつの時代も大変なことに違いありません。
文化の発達した現代でも、子育てに特別な簡易法などあるわけはなく、手作業であることに変わりはないのです。まして親にとっては初めての体験。子供との日々のつき合いの中で、悩み、学びながら、本当の親になってゆくのでしょう。
手の掛からなかった子供がある日突然・・・
私が以前勤務していた病院での体験です。
おとなしかった小学生のA子ちゃんが、ある日突然、自分の髪の毛を切って家の隅に閉じこもってしまいました。また、中学l年生のB男君は以前も時々、頭やお腹が痛いと訴えることはあつたのですが、ある日、学校に行くのを嫌がり、連日体校するようになりました。2人とも、他の兄弟に比べて手が掛からない育てやすい子だっただけに、親にしても何が何だか分からず、思い余って相談に来られました。
お話を間いてみると、A子ちゃんの家庭は、お父さん、お母さんとも仕事で忙しく、A子ちやんがおとなしいことにも気を許して、あまり構ってやれなかったと言います。また、夫婦も意見が合わないことが多く、しばしば言い争いもあったようです。
A子ちゃんは、そんな両親を生まれたときから見ていて、生きることが楽しくないと思い込んでしまったのでしょう。髪を切ったのは、この世界に愛想ずかしをした行動だったのです。
B男君のご両親は教育関係の仕事をされていました。長男でもあり、子供にもそうなってほしいと小さい頃から塾に通わせ、頑張らせてきたとのことでした。B男君も、嫌がることなくそれに応えてきたそうです。しかしB男君にしてみれば、ご両親の敷いてくれたレールの上を、否応なく後押しされて歩いて来たわけです。それでエネルギーを使い果たしてしまったのです。学校へ行くエネルギーが切れてしまったのです。
子供のサイン見逃さず楽しい思い出作りを
子育ては、親にとって初めての体験ですから、反省すべきことがあっても当然でしょう。その過程で子供は色々なサインを出して警告しますが、親が自分のことで忙しいと、そのサインを見落としてしまいがちです。
ご両親は、日々の子供の言動や表情の変化にアンテナを張って、どうか逆戻りできる軽いうちに対応してあげてください。誕生日にはケーキを、お祭りには臨時のお小遣いを・・・。一つ一つの楽しい思い出が生きる力を蓄えます。
「人間は楽しむために生きている」、この考えが子供に伝わるような生き方ができたら、最近増えている子供のこころの病気も無くなるに違いありません。
小児科いろいろ知識集