子どもへの虐待はなぜ起こる

 雪も小安状態が続いています。まだ2月、このまま終わるとは言えないのが北陸の冬ですよね。まー、もう一発ぐらい仕方ないと思いますが、お手柔らかに願いたいものです。
 そう言えば、例年のインフルエンザも影をひそめています。日本各地、石川県でも単発的に報告されていますが、大流行とはなっていません。今シーズンは、ワクチン接種が行き渡った為なのか、流行株に対する抗体を持った人が多いためなのか、理由は分かりませんが、流行らないに越したことはありません。脳炎や脳症の犠牲になる子どもも少ないでしょうから。
 さて、今月のマンスリーニュースは、今社会問題になっている、子どもへの虐待がなぜ起こるのか考えてみたいと思います。

  被虐待児症候群

 マンスリーニュース第85号(平成10年11月)に「被虐待児症候群」として、母親からの虐待を受け精神運動発達の遅れてしまった女の子について書きました。火傷の跡や骨折が身体中に認められましたが、幸いにも命を落とすことなく母親から離されて、保護を受けることが出来ました。この子は、10ヶ月余りの家庭からの隔離(入院)によって精神、運動面での目覚ましい発達を見せました。暴力の恐怖から解放され愛情深く接することが、これ程までに子どもの発達に影響を及ぼすとは思いもよりませんでした。

 子どもへの虐待が増えている

 最近の新聞を見ても、虐待の話題が載らない日は少ないと言っていいでしょう。2月初めの北陸中日新聞にも「相談が激増 児童虐待 急務の対応」と大きい見出しで県内の現状について解説されていました。
 「県の児童相談所に寄せられた相談は、1993(平成5)年度に、わずか6件だったが、98年度が41件、99年度は76件に急増。昨年4月から12月末までは、78件に上っている。」と。
 また、他の同時期の新聞にも「なぜ起きる 児童虐待」という連載があり、「民間団体の調査では99年に全国で100人以上の子どもが虐待によって亡くなった。」と指摘している。子どもが死亡するまで、救いの手が差し伸べられなかったのです。

 児童虐待への対策

 児童虐待が増加するのに対応して、早く虐待を見つけ子どもを保護するために、昨年11月児童虐待防止法が施行されました。児童虐待防止法は、教師や医師、弁護士らに虐待の早期発見を求めるとともに発見者の通告を義務としました。また、児童相談所は、すぐに子どもの安全確認と保護が出来、必要なら家に入って調査することも可能となりました。児童相談所の役割が大きくなったのです。
 民間では、はからずも子どもに危害を加えてしまった親に対して、精神的な支えが必要との考えから、「虐待に悩む親子を支援する会」(電話 076-296-3141)が活動を活発化しています。米国では、親への支援システムがすでに確立しているそうです。

 児童虐待を減らすには

 2000年1年間に全国で起こった虐待事件を分析した結果、その親の動機として「子どもが意のままにならない」「育児の悩み・疲れ」が多くの部分を占めていました。
 最近、松任市・石川郡の保健婦さんや小児科医・産婦人科医が集まって子どもの様子を話し合う会がありました。今年で3年目なのですが、大変有意義な会合です。その会合の終わり近くになって、松任市のお母さんに対する子育てアンケートの結果が示されていました。
「育児は楽しいですか?」の問いかけに対して、3〜4ヶ月の子どものお母さんは85%近くの人が楽しいと答えていました。1才半の子どものお母さんになると、楽しいと答えたのは、68%位に減りました。3才児のお母さんではなんと、4割以上のお母さんが育児が楽しいとは感じられなくなっていました。3才頃は子どもの自己主張が強くなる時期です。これは子どもの発達にとって、大変重要な時期であるのに、お母さんはそう感じていないのです。反抗するようになったということは、正常に育っている証拠なのです。「子どもが意のままにならない」が虐待の引き金になっているならば何と皮肉なことでしょう。
 お父さんも、お母さんも疲れています。仕事に子育てに・・・虐待を減らすには、親が余裕を持って子どもと接し、かつ見つめ合える育児環境が不可欠です。国の政策として、子育て盛りのお父さんお母さんが、「会社の仕事と同じくらい子育ては大事なんだ」という気持ちになれるようにしてあげてください。何しろ子どもたちは日本、いや人類の未来を担う存在なのですから。

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