続・子どもへの虐待はなぜ起こる

何種類かの風邪が、3月半ば近くになって急に流行だしました。問題のインフルエンザは、全国的に報告されてはいますが、地区によって流行状況がずいぶん違うようです。当院でも、インフルエンザ 診断キットをそれらしい患者さんに使ってみました。現在のところ27検査中11検査でA型インフルエンザ陽性でした。年齢は乳児から成人までで、1才以上の患者さんには、シンメトレルやタミフルという薬を使いましたが、翌日には解熱して元気な顔を見せてくれました。特効薬という言葉がぴったり当てはまる効果でした。
 さて、今月のマンスリーニュースは「続・子どもへの虐待はなぜ起こる」として更に幼児虐待について考えてみたいと思います。

 座談会にて

 昨年暮れに、「心配・子どもの心と体」という関係者を集めた座談会が開かれました。
 「子どもの虐待ホットライン」という電話での相談を受け、お母さんのお話を聞かれている先生が、虐待をしてしまう心の状態についてこんな風にお話しされていました。
「私たちは、虐待せざるを得ないような心理状況を理解した上で、そういうお母さんを支援する、受け入れることによって子どもの虐待を予防する、もしくは重症化を防ぐというスタンスで「子どもホットライン」をやっています。
 子どもの虐待では、よく世代間伝達ということが言われます。つまり、自分が幼少時に虐待を受けたとか、過度のしつけとか過度の英才教育の中で育って、親に無条件の愛情を感じなかった生育歴を持っている人も、虐待するお母さんの背景としてはよくあることなんですね。信頼感を持てないで育っている。ずっと否定され、けなされながら育ってきているというような経験のある方が多い。親との間で解決していない大きな葛藤が残っている方が非常に多いですね。それを発散できないでいるので、わが子を育児する環境になると、自分で分からないけれども、止められない怒りが舞い上がる心理から子どもを虐待してしまう。虐待の予防はそういうお母さんの、なかなか人に言えない気持ちをとりあえず全部受け入れて、お母さん自身がそれを言語化できて受け入れてもらうことによって、抑圧された怒りとか攻撃性が子どもに向くのではなくて、別の方法で発散できるように支援するというのが電話相談のねらいでもあるんですね。」
 
この先生は、幼児虐待が単純な動機からではなく、やむにやまれぬ状況から生まれてきているとお話しされました。一筋縄では行かないというのが真実なのだと思います。しかし、どんな幼児期を過ごしたかが、虐待を生むひとつの要因になっているならば、育児に当たっての心構えを、もう一度見直すことは無駄ではありません。親の虐待に命を落とす幼い子どもを少しでも減らすために、早急な見直しが必要です。

  私たち世代の責任?

 現在、虐待する親が増えているということは、私たちの息子・娘世代がその加害者になっているということになります。自分達が子育てに一生懸命だった頃の親の反省は何でしょうか。その時はそれが当たり前というのが本音です。日本がバブル経済にさしかっかった頃でしょうか。お母さんも働きに出るのが次第に当たり前になってきていました。経済的に大変というよりも、楽しむためのお金がほしいという状況だったような気がします。そんな大人たちの陰で、子ども達はどんな幼児期を過ごしていたのでしょうか。
 核家族、鍵っ子、父親不在、中流家庭・・・子ども達は文句を言いませんでしたが、親が何か見えないものを追いかけて子ども達を置き去りにしていなかったでしょうか。子ども達は寂しかったに違いありません。親は、子どもが早く自立することを求め過ぎてはいなかったでしょうか。子ども達は十分な愛情を感じずに大人になったに違いありません。私たちの世代は、人間の幸せというものを間違って理解し、経済的に豊かなことだけを求めていなかったでしょうか。子ども達は、「そんなことは当たり前だ」と直感で理解していたに違いありません。大人達は、いくつもの習い事を子どもにさせることが、子どもの幸せにつながると半信半疑ながら考えていなかったでしょうか。子ども達は、腹痛や頭痛を訴えながら、親の独りよがりに付き合ってくれました。

  障害を持つ親の教育

 こう考えてくると、虐待せざるを得ない親を作り出したのは、その親の責任ということになります。障害を持っていたのは親だったのです。世代間伝達を防ぐには、まず親が人間の幸せとは何かを正しく理解する必要があります。親の世代は責任ある政治を操る世代です。国が何が大事と考えるかが幼きもの弱気ものへの虐待を防ぐ鍵に違いありません。
森さん早く鍵を開けてください。                                  あー、ちょっと遅かったかな!

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