おたふくかぜ超・大流行中
       ワクチン接種で予防を!

 11月に入って朝晩の冷え込みが更に厳しくなってきました。お腹につく風邪も10月から継続して流行っています。それにも増して相変わらず流行がとどまらないのが、「おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)」です。特に石川県内の流行は、全国でも突出しています。県内でも石川松任郡市医師会管轄の地区が多いそうです。流行は、保育所・幼稚園から、小学校へも飛び火してきました。予防はワクチン接種しかありません。
 今月のマンスリーニュースは、「おたふくかぜ」関連でお届けいたします。

 下の折れ線グラフは、国立感染症研究所の感染症情報センターホームページから取り出したものです。1991年から2001年までの「おたふくかぜ」の流行状況を示していますが、で描かれた折れ線が一番上にあり、28週頃のピークは過ぎたものの再び増加傾向にあることが読みとれます。43週(10月22日〜28日)の時点で、定点当たりの報告数が1.5になっていますが、センターからの解説にはこう書かれています。「流行性耳下腺炎の定点当たり報告数は、第19週よりここ10年間で最大の定点当たり報告数が持続している。流行性耳下腺炎の定点当たり報告数が多くなっているのは、石川県(4.9)、沖縄県(4.3)、富山県(4.2)などである。」つまり、石川県は他県の3倍以上のおたふく患者が報告されているわけです。「おたふくかぜ」を再確認してみましょう。


おたふくかぜ(流行性耳下腺炎:英語でムンプス)とは?

 ムンプスは、パラミクソウィルスで起こる急性伝染性の、主に唾液を作っている唾液腺(耳下腺や顎下腺)の炎症を起こして、痛みや腫れを伴う病気です。しかし、25〜30%の人は、症状が出ないのに感染している時もあります(不顕性感染)。一つだけの唾液腺が腫れただけでも、感染は感染ですから終生免疫が得られます。ムンプスの感染は、飛沫や唾液が直接口に入って起こります。ウィルスの排泄は、唾液腺が腫れる6日前から、腫れた後9日目位まで、唾液に認められますので、この期間は感染する可能性があるわけです。保育園や学校はお休みです。かかりやすい年齢は、5才〜10才ですが、まれに2才以下でもうつります。普通、1才までは母親からもらった免疫を持っています。

おたふくかぜの症状と経過は?

 ムンプスの潜伏期は、12日〜25日です。初めの症状は、唾液腺の腫れる12〜24時間前から認め、寒気や頭痛、まただるいと訴えることもあります。発熱は初め、軽度から中等度です。軽症の場合は、これらの症状を認めないこともあります。耳下腺腫脹の最初の症状は、噛むときの痛みと、オレンジジュースなど酸っぱい物を口にしたときの痛みです。また、押すと痛がります。耳下腺が腫れるに連れて熱は上昇し、ひどいと39.5度〜40度まで上がります。時には耳下腺のみではなく顎下腺や舌下腺も腫れます。また、顎下腺のみが腫れる場合もあります。腫れは、普通は1週間ですが、長いと10日間ということもあります。

おたふくかぜの合併症は?

 睾丸炎と卵巣炎:思春期以後にかかると、睾丸炎や卵巣炎を起こしやすくなります(20〜30%)。普通は片方だけですが、まれに両方がやられると不妊の原因になることもあります。
 
髄膜炎と脳炎:ムンプスの髄膜炎は有名ですが、患者の1〜10%に起こると言われます。頭痛と吐き気が主な症状です。症状が強い場合は入院治療が必要です。1000〜5000人に一人の割合で、更に重症な脳炎を起こすこともあります。症状は意識障害から昏睡、けいれんを伴うこともあります。髄膜炎や脳炎を起こしても「はしか」よりは、はるかに経過が良く後遺症が残ることは滅多にありませんが、時には片方(まれに両方)の難聴や顔面神経麻痺を残すことがあります。
 
膵炎:1週目の終わり頃に、突然の激しい悪心や嘔吐伴い、腹痛を訴えることがあります。この場合は膵炎が考えられますが1週間ほどで回復します。
 
その他の合併症:前立腺炎、腎炎、心筋炎、乳腺炎、多発性関節炎といろいろです。

おたふくかぜの診断は?

 流行中の診断は簡単ですが、流行していない時は、化膿性耳下腺炎や反復性耳下腺炎と間違えないようにする必要があります。確定診断は、ムンプス-IgM抗体を確認すれば明かです。

おたふくかぜの治療と予防は?

 治療は、症状を抑えるだけの対症療法です。固い物や酸っぱい物を食べるのは避けましょう。痛みや熱が激しいときは、鎮痛剤や解熱剤を最低限使用します。貼り薬は気持ちを落ち着かせるかもしれません。かぶれるときは止めましょう。 ムンプスの予防は、ワクチンしかありません。1才を過ぎれば接種出来ます。効果は90%です。

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