医療改革とは?

 あけましておめでとうございます

 波乱の年を予感させる2002年が明けました。依然、景気は回復しないままです。小泉首相は、国の財政建て直しのため行財政改革に必死で取り組んでいます。(私の高校の先輩なので、ひいき目に見ています。)「米百俵」「三方一両損」と聞き慣れない言葉が飛び交い、その言葉に何となく納得させられてしまいそうですが、それでいいのかな?
 医療制度にも容赦なく大鉈(おおなた)が振るわれようとしています。外来ではお父さんが子どもさんを連れてこられる機会が増えてきました。失業者がこれまでになく増加しているのですから、それも納得です。追い打ちをかけるような、患者負担を増やす医療改革とは一体なんでしょうか。「三方一両損」と言いながら弱い所ばかりにしわが寄る政策には納得いきません。
 新年のマンスリーニュースは、医療改革について考えてみましょう。

 日本の不景気

 日本の財政が借金だらけなことは、皆さんも新聞やテレビ報道でよくご存じのことと思います。でも普段の生活でそんなに借金があるなんて感じたことないですね。いつも道路工事はしているし、お店に品物はあふれているしね。だけど会社の倒産やリストラで職を失う人が大勢でています。お父さんお母さんは、将来どうなるか分からないから働いて貯めたお金はあまり使いたくない。そんな気持ちが国全体にあるから景気が悪くなる。景気が悪くなれば会社がつぶれる。悪循環ですね。
 また、新聞には日本の特殊法人という特別な団体が、お金を無駄使いしているという報道もあります。小泉政権は、この団体にも大鉈を振るっています。抵抗勢力の圧力も強いでしょうが是非成功してほしいです。みんなが納めた税金が、いつの間にか不正に使われたり、無駄に使われることがないようなシステム作りが必要です。一つ一つの改革が、日本の赤字財政を救い、景気の回復につながるのだと思います。

 医療改革はどうなの

 毎年の日本の医療費増加に対して、新聞や雑誌は大変問題であるというとらえ方をしてきました。それが、今回の医療改革につながったことは明らかです。でも、患者さんの負担を増やすことが医療改革なのでしょうか。また、医療費を減らすことが医療改革なのでしょうか。いえそうではないはずです。「国民が安心して医療を受けられる・健康管理を任せられる医療制度」・・・これが医療の最終目標である以上、これに反する今回の制度変更は問題の多いものであると言わざるをえません。問題と思うのは、医師の診療報酬(技術料)が引き下げられたことや老人の医療費負担が増えたことです。「国全体の景気が悪いのだから、お医者さんも我慢して、患者さんも我慢して」ということで、患者さんと医師にだけ負担を負わせるという格好です。しかし、日本の医療費が高い大きな原因は、薬の値段が高すぎるという事実を抜きにしては語れないと思います。製薬会社も「一両損」に参加しなくては片手落ちです。

 保険制度を守る

 「国民全員が医療保険に入り、いつでも安く安心して医療を受けられる。」・・・現在の日本の医療制度は大変理想的なものです。アメリカでさえ作れなかった制度です。しかし、問題になるのは保険財政の赤字です。社会保険も国民保険もすでに破綻の状態です。ここで薬価の問題と医師と患者さんの病気に対する意識改革が必要になってきます。現在の理想的な医療保険制度を維持させるためには健全な保険財政が必須のものです。そのためには医師も「証拠に基づいた医療」(Evidence Based Medicine:EBM)を目指し、無駄な薬剤や医療行為を行わない聡明さを発揮しなくてはなりません。また、患者さんも症状をある程度見極めた受診を目指すべきでしょう。自分だけの保険制度ではなく、みんなの保険制度という意識が必要です。

 国の医療への責任

 さて、医療改革の担い手である国はどんな医療を目指しているのでしょうか。今回の医療改革で明らかになったことは、医療費も一般財源と同じように減らさなくてはならない、つまり無駄なお金と思っていることでしょうか。日本の医療費は多い多いと言われますが、国民総生産(GNP)に占める割合からすれば、欧米先進国の中では少ない方に入っています。日本はもっと医療費を出してもいいのです。無駄なところに使われている税金を医療にもっと振り分けてもいいのです。老人や子育て中の親子には、もっと優しく接してあげても良いのです。ついでに医師にも余裕をください。
 新年の保険医新聞にこんな引用文がありました。国富論の著者、アダム・スミスいわく
「社会の尊敬と保護がなければ、安心して命を預けられるほどの医師の倫理観は育つはずがない。」偉い人はちゃんと人間を視ています。


お知らせ

1)来る2月16日(土曜)は、院長出張のため金大小児科より代診の先生が来られますのでご了承ください。
2)2月頃から、シロップ剤のキャップがセイフティーキャップ(安全ふた)に変わりますので開け方にご注意ください。


 目次へもどる      次ページへ