タミフルという薬

 スギ花粉が猛威を振るいだしていますが、小児科外来は胃腸につく風邪や高い熱を伴う風邪、それに加えてボチボチとインフルエンザ、特に 型が依然流行中です。インフルエンザ診断キットは、全国的に品薄状態です。県内小児科医有志が作るメーリングリスト(マンスリーニュース2月号参照)には、毎日インフルエンザキット陽性のデータが送られ地域の流行状況が把握できます。インフルエンザ陽性の 1才以上の患者さんにはタミフルという薬を使っていますが、翌日あるいは翌々日には解熱して、元気な顔を見せてくれます。まさに特効薬という言葉がぴったり当てはまる効果です。
 さて、今月のマンスリーニュースは、このタミフルという薬について考えてみたいと思います。

 タミフルという薬

 朝日新聞の投書欄にタミフルについての日本の現状を示した記事が載りましたので転載してみました。


「タミフルカプセル」は副作用が少ないよい薬です。ただし、成人か体重 37.5キロ以上の子どもにしか使えません。厚生労働省は今年1月、幼小児向けの「タミフルドライシロップ」を承認しましたが、発売開始は4月以降になるということです。仕方がないので違反を承知で、カプセルを外して量を少なくし、処方しています。承認されたのに使えないとは、どういうことなんでしょうか。 (神奈川県、小児科医、45歳)

この質問に対して、以下の答えが載っていました。
 
○薬価決定年4回、販売間に合わず 違反承知で子供に処方
 投書を寄せてくれた小児科医を訪ねた。「実は昨シーズンから大人用タミフルの処方を始めました。薬代は通常通り、保険請求しています」
 昨年度、保険請求分はすべて認められたという。「メーカーによると、今年度は同様の例が目立ち、小児への処方分はレセプト審査ではねられるかもとのことでした」
 この小児科医の知り合いの医師の場合、保険請求せず、原価に100円ほどの手間賃を足した1錠約500円で患者に渡していた。厚生労働省は、保険診療と保険外の自由診療を組み合わせた「混合診療」を原則として認めていない。違法を承知の行為だという。
 「後ろめたい気持ちはある。ただ、効果がはっきりしているのに薬を出せないジレンマの方が大きい」と説明する。
 医療現場では患者の利便性を考え、あの手この手でタミフルの小児適応が広がっているらしい。
 
○優先審査通る
 タミフルを輸入販売する日本ロシュが、タミフルドライシロップの新薬承認を申請したのは昨年7月。「有効性や安全性が優れている」との理由で優先審査され、今年1月17日に承認された。 しかし、承認されただけでは、医療機関に出回らない。保険適用されるには、薬価を決める「薬価収載」という手続きが必要だからだ。
 厚労省が製薬会社から希望価格の提出を受けて原案を作り、医師や薬剤師らからなる「算定組織」で薬価が示される。製薬会社側が納得すると、中央社会保険医療協議会(中医協)で了承を受け、官報に告示して初めて薬価は決まる。
 この手続きは年4回だけだ。なぜだろうか。

 厚労省保険局医療課を訪ねた。「新薬を承認する薬事・食品衛生審議会薬事分科会を年4回しか開かないからです」
 1年間に承認される新薬は平均30種類ほどで、年4回開けば十分だという。承認から収載までの期間も、通常60日以内、遅くても90日以内と定められている。前回の薬価収載は昨年11月だった。
 それでも、疑問は消えない。タミフルドライシロップのように優先審査され、しかも「季節物」の薬は、緊急に薬価を決めてもいいのではないか。
 「エイズ治療薬だけは特別に緊急収載します。それ以外は必要性はなく、認めません」と、医療課の薬剤管理官。
 
○緊急決定例も
 ところが昨秋、白血病とC型肝炎の治療薬に対し、承認から収載までの期間が17日間という「超スピード収載」があった。11月21日に臨時の薬事分科会を開いて承認、22日に算定組織を開催、28日に中医協で了承、12月7日に告示というスケジュールだった。
 薬剤管理官にこの事例を聞いても、「たまたま算定組織と中医協の日程が合っただけ」と繰り返した。この例を緊急収載と認めると、製薬会社から「なぜうちの薬は早く薬価を決めてくれないのか」と不満が出て、収拾がつかなくなるからだろうか。「うーん。我々の事務処理能力にも限界があるんです」
 薬価収載までの期間が長くなるか短くなるかは、運も関係しそうだ。
 られる。
 
◆子供の命考え柔軟な対応を
 記者の感想:新薬承認や薬価収載を申請ごとに認めていては、確かに非効率になる。しかし、インフルエンザのシーズン前に承認されたのに、「薬価収載は年4回」の理由だけで使えないのは、しゃくし定規ではないか。インフルエンザが原因とみられる脳症・脳炎で死亡する子どももいる。せっかくの薬も使えなければ意味はない。


 今年も小児のインフルエンザ死亡が報道されていました。確か十数名ということでしたが、最終的な死亡数はもっと増えるでしょう。子どもの死亡ほど悲惨なものはありません。現代医学が、不完全であることは否定できません。タミフルがインフルエンザ脳炎・脳症の切り札になるかも不明です。しかし、インフルエンザを短期間で治癒させる効果は確認され、安全性もまずまずな薬が、お役所の都合で使えないということが信じられません。小児科医はやむなく保険請求することなく、自己責任で処方しています。アメリカではすでに今年の1月17日、インフルエンザ流行前に子供用タミフルドライシロップが発売されました。アメリカの良いところは真似してください。宗男さんにでも頼もうか!
 小泉さん、国の未来は子どもたちがにぎっていることをもっと認識してください。



 
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