今どきの寄生虫

 生活環境も良くなり、化学肥料も普及したことによって、回虫や十二指腸虫など、昭和二十年代には国民の70%が感染していたという寄生虫症が減少していることは事実です。しかし、最近では都会型と言われる蟯虫症が、幼児の施設や学校で高率に見つかっています。毎年の蟯虫検査で指摘され、「あー、またか。」と思われた方も多いでしょう。今回は蟯虫症を中心に寄生虫について勉強しましょう。

蟯虫症(ピンヲオーム=ピンの様な虫)

 蟯虫は世界中に分布しています。年令に関係なく寄生しますが、特に、子供で多くみられます。幼稚園や保育所、学校では、5 〜 20 の子供で、感染が見つかるといいます。
蟯虫症の症状は?
 肛門周囲の夜間のかゆみと、そのための不眠が主な症状です。落ち着きがない、あきっぽいなどの神経症状が実際に起こるのかどうかは、はっきりしていません。お母さん方が、子供の蟯虫を駆除したあと、そんな変化があったかどうか教えてほしいと思います。蟯虫は、回虫の様に組織に迷い込むことは少ないのですが、まれに虫垂や腟、腹腔内で見つかることもあります。
蟯虫症はどんな経路で感染するのか?
 感染した患者さんの夜間の肛門の周りはとてもにぎわっています。何しろメスの蟯虫が、一時間に六千から一万個の虫卵を産み付けているのですから。その卵は患者さんの手や衣服、寝具、そして室内のほこりなどに混じって、ほかの人の口へと感染していきます。
蟯虫症の診断
 皆さんも良くご存じの様に、セロファンテープを肛門に押しつける方法で調べます。セロファンに虫卵が付着しているのを、顕微鏡で見つけるのです。直接便を調べても、虫卵は見つかりません。たまに肛門の近くで、1センチ程の成虫を発見することもあります。セロファンで見つかる率は、調べる回数によって違ってきますが、1回だと、虫卵を持っている人の60% 、3回で 70% 、8回やっても90% と完全ではありません。少なくとも3回は必要と言われています。
蟯虫症の治療
 蟯虫の駆除は、学校、家庭など集団での対応が必要です。コンバントリンという薬を、普通は一回、再発しやすい場合は、二週間後に、もう一回服用します。いなくなったかどうかは、二〜三週間後に、セロファンで二〜三日続けて調べます。くれぐれも悪い虫には、気を付けましょう。

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