SARS(重症急性呼吸器症候群)

 松任では田植えも終わり、時に汗ばむ程の日もある季節になりました。愛犬の散歩で田圃道を引っ張られながら歩いていると、肌に当たる風がさわやかです。
 世界は、フセイン政権の崩壊と共に少し穏やかになったのかもしれませんが、イラン国内は未だ不安定、子ども達はどうしているのでしょうか。早く安心して学校に行けるよう祈ります。
 さて戦争に代わって、世界を恐怖に陥れているのがSARSです。三月、四月と次第に患者数、死者数を増やしています。日本での患者数は、ゼロとなっていますが、いつ報告されても不思議ではありません。
 今月のマンスリーニュースは、遅きに失したかもしれませんがSARSの現状についてお伝えしたいと思います。

  SARSの始まり

 本年2月26日、男性一人が、高熱、痰を伴わない咳、筋肉痛、軽い咽頭痛の症状でハノイ(ベトナム)の病院に入院しました。この患者は、入院後4日の間に呼吸困難が悪化し、高度の血小板減少と呼吸障害の症状を示し、人工呼吸器を必要とするようになりました。これが最初に報告されたSARSの患者さんです。
 WHOは3月15日、アジアから世界に拡がり、原因不明で通常の薬では治療出来ない急性肺炎について、異例の「緊急警報」を出しました。報告ではこの時点で、150人の感染者と9人の死亡が確認されました。(5月22日のWHOの発表では、世界で8046人の患者と682人の死亡が伝えられています)この病気は、症状の強さからSARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)と命名されました。

  SARSの症状

 SARSの症状は感染して2日〜7日の潜伏期を経て出現します。突然の筋肉痛、高熱、激しい空咳、更に息切れと呼吸困難へと進行します。時には、頭痛、筋肉のこわばり、食欲不振、全身倦怠感、意識混濁、発疹、下痢などを伴うこともあります。命に関わる症状は肺炎です。これは、間質性肺炎という特別な肺炎で、酸素と炭酸ガスの交換をしてる組織を侵す肺炎です。重症になれば酸素不足で死に至るわけです。
 死亡率は初め5%と言われていましたが、7%から最近では15%にものぼる事が報告されています。年齢によっても死亡率は違うようで、ある報告では60才以下で13%、60才以上だと43%ということです。何と恐ろしい病気でしょう。

  どんなウィルスか

 原因となっているウィルスが次第に分かってきました。CDC(米国疾患対策センター)は3月24日、SARSの原因の少なくとも一部として「風邪症状を起こすコロナウィルスの新種を患者から発見」と発表しました。何と驚いたことにこの恐ろしい病気は、もともとは普通の風邪を起こすウィルスが原因だったのです。
 コロナウィルスの風邪は、感染後3日ほどして、軽い発熱、頭痛、鼻閉、咳などの症状が出て1週間で回復する普通の風邪です。特別な性質として、感染しても免疫を作らないことが知られていますが、SARSのウィルスも免疫を作らない性質を受け継いでいました。免疫を作らないと言うことはワクチン療法が困難という事です。また、現時点では特効薬もありません。

  感染力は?予防は?

 3月24日のWHOの感染力に対する回答は、濃厚な接触のあった人のみに感染するという飛沫感染と考えられていました。しかし、その後、香港のマンションで何十階にもわたって、121人が感染している事実は、空中に浮遊した生きたウィルスにより感染する可能性が考えられました。つまり空気感染です。(現在、空気感染は否定されています)5月7日のWHOの報告も、SARSウィルスがプラスチックの表面で四十八時間生存すること、更に患者の排泄物から下水道を通じて感染する恐れがあることも伝えられました。感染力は強いです。
 これに対してどんな方法で対抗したら良いのでしょうか。
●汚染地帯に近寄らない
  渡航禁止勧告が出されています。
●マスク
  医療用(N95)、工業用
●手荒い
●感染者や疑いのある人の隔離
  中国では16000人が隔離されているそうです。
感染症予防の原則に基づいて対応するより仕方ありません。

  自分がかかったら

 危険地帯から帰国して、不幸にも自分がかかったかもしれないと思ったら、直ぐ病院へ???ではダメなの!
 そうです。病院で更に感染者を増やすかもしれません。まずは、その地域の昔の保健所(現在、松任では石川中央保健福祉センター:電話275-2250)へご連絡下さい。対応出来る病院も決まっていますからご安心下さい。
 今のところ日本でのSARS確定例はゼロですが、台湾や韓国で出ているのですから人ごとでないことは明らかです。ベトナムが迅速に、かつ的確に対応し被害を最小限に抑えたことが伝えられています。日本でもそんなふうに対応出来るよう、身近な情報をもっと流す必要があるように思います。
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追伸:5月9日の時点では、まだ日本での報告はありませんでした。ところが、5月8日からSARS患者と接触のあった(5月17日にはSARSと確定)台湾人医師が、関西空港から入国し、大阪から宮津、姫路、小豆島、淡路島と幅広く観光していたことが判明しました。それからはてんやわんやでしたが、帰国から10日を経過した23日に感染者がいなかったことで政府は終息宣言を出しました。まー、一段落ですが5月24日の深夜ニュースで、一時収まっていたカナダで再び5名の感染疑いが出たことを報道していました。世界的には終息方向に向かっているようですが安心は出来ません。突然近くで接触なんて事が絶対無いとは言えません。基本はマスクと手洗いですね。
  
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