BCG接種は、6ヶ月までに

 11月というのに、今日(23日:勤労感謝の日)は、本当に天気も良く暖かでした。久しぶりに太陽の光をたくさん浴びることが出来ました。
 さて、中越地震から1ヶ月が経過し、被害を受けられた方々も、精神的に少し落ち着いたところかもしれません。しかし、これからは寒さに向かって、再び自然との闘いです。昨日、仮設住宅の様子がテレビに映っていましたが、仮設と言っても豪雪地帯なりの配慮が必要である事を専門家が指摘していました。なぜなら雪国の玄関には必須の前室が無かったのです。細かい配慮が、被災し落ち込んだ心にどれだけ、力を与えてくれるかを考えて頂きたいと思います。
 さて、今月のマンスリーニュースは、来年4月から結核予防法の一部が改正され、BCG接種時期が変更される話をお伝えします。ちょっとビックリかもしれませんが、時代と共に病気に対する対応も変わっていくんですネ。

  結核患者は減少

 私が医者のタマゴ、つまり30年程前に、結核性髄膜炎(結核菌による頭の感染症)で、入院されている乳児を診たことがあります。家族に結核患者さんがおられて、その菌が赤ちゃんに感染したのです。長いこと意識がもどらず、重症な後遺症を残したまま退院されていきました。
 更に20年前。私の叔父が結核で、大きな病院の薄暗い(多分)結核病棟に入院していた時、母と共にお見舞いに行ったことがあります。感染を恐れる母は、私を玄関の待合室に置いたまま、一人病棟へ向かいました。遠い記憶ですが、結核という病気の恐ろしさを刻み込まれた思い出です。
 その結核も、完全とまでは行きませんが、年々減少の一途をたどっています。ちなみに最近の新規結核患者数は、人口10万人に対して、日本25人、アメリカ5人、イギリス11人、フランス10人ということです。この数字は、日本は「結核中まん延国」(年間4万人の患者が出ています)という評価です。また、かかっている人も、以前は若者が多かったのですが、最近は高齢者やエイズなどの基礎に病気を持っている人が多くなっています。さらに、地域によってもかかる人の数が随分違います。大阪市は、長野県の6倍という数字です。
 これらの事実は、その地域や年齢によって、きめ細かな対応が望まれるという事になるのでしょう。しかし、手をゆるめることによって新たな犠牲者が出ないか、国も自治体も、我々医療を直接預かる者も責任重大です。

  BCGはどうなるの

 現在のBCG接種の対象者は、「4才未満のツベルクリン反応陰性者」ということになっています。
 平成14年度までは、7才(小学1年)と13才(中学1年)に、ツベルクリン反応が行われていましたが、結核患者の発見率が大変低いことや、この年令でのBCG接種の医学的効果が明らかになっていないことなどの理由から定期的には行われないことになりました。
 さて、来年の4月から「4才未満のツ反陰性者に接種」だったBCGが「生後直ぐから生後6ヶ月までの乳児にツ反せずに接種、(天災などで)やむを得ない場合は1才まで」になります。ビックリしたでしょう。それなりに理由があってこうなったわけですが、国は、「予算を減らしたいのかなー」という考えも少し脳裏をかすめます。
 乳幼児の結核性髄膜炎や、結核菌が全身にばらまかれる粟粒(ぞくりゅう)結核という命に関わる恐ろしい病気を予防する為には、生まれて出来るだけ早くBCGを接種する必要があります。しかし、BCGを接種できない先天性免疫不全という病気がありますから、生まれて直ぐではなく、生後3ヶ月から6ヶ月(やむを得ない場合は1才まで)ということになるでしょう。この3ヶ月間に、すべての乳児がBCGを受ければ相当効果が出るでしょう。(国の示す目標は、BCG摂取率6ヶ月で90%、1才で95%です)しかし、集団接種にしても個別接種にしても、どうしても接種漏れが出てきてしまうのが普通です。6ヶ月までは国が費用を負担してもらえますが、6ヶ月から1才は市町村が費用を負担してくれるのでしょうか。これも市町村によって違ってきます。また、1才以後の接種は、重症感染が少ないから不要という先生、心配だから接種しようという先生、いろいろかもしれません。
 要は、皆さんと医療従事者が主体性を持って、結核感染をいかに予防し、かつ、いかに早く発見し治療するかということが大切なのでしょう。

  結核健診も効率的に

 小中学生のツ反・BCG接種の廃止後、学校の対応も変わってきました。すでにご存じと思いますが、家庭にアンケートを配って結核の感染が疑わしい症状がないか記入してもらっています。まだ年間4万人も結核患者が出るのですから気を許すわけには行きません。しかし、闇雲に健診するより効率的にやるに越したことはありません。
 来年4月からは、高校生、大学生の入学時健診、老人ホームや障害者施設の健診、また学校や病院、診療所など多くの人たちと接する仕事場の従業員の健診。さらに、市町村では65才以上の高齢者や、結核発症の状況に合わせて健診を必要と認められる人など絞り込んだ健診が予定されています。
 「麻疹輸出国日本」も大問題ですが、「結核中まん延国日本」の汚名も早く返上したいものです。その為にも、皆さん!母子手帳のBCG接種欄を再度確認してネ。
 
     
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