三朝(みささ)にて 第3回鳥取発心のふれあいプロジェクト全国集会

13日朝、病院の駐車場は雪でおおわれていました。久しぶりの大雪です。その後も断続的に雪が降り続いています。12月にしてはいつにない雪の量だそうです。高速道路の通行止めや、鉄道の運休も報道されていました。14日の夜、春に買い求めておいた耕耘機に雪よけの付いた雪掻き機を息子の助けを借りて始動しました。エンジンのけたたましい音と共に、ギアを入れると動き出しました。道路すれすれに雪よけが移動するように力加減をするのが難しい機械です。力もいる機械なので、もっぱら息子が動かしました。私はママさんダンプで取り残した雪の掃除役です。3時間程でどうにか格好がつきました。久しぶりの汗びっしょりです。でも何となく爽やかでした。深夜風呂に順番に入って眠りにつきました。翌朝、私は、案の定身体が痛みました。
 さて今月のマンスリーニュースは、鳥取県三朝町での研修会の報告です。

  どうにか三朝町まで

三朝町は、鳥取県中部に位置する温泉で有名な町です。近くには鳥取市、米子市に次ぐ倉吉市があります。鳥取と言うと、私は砂丘と梨くらいしか浮かんできませんが、皆生温泉を筆頭に温泉が沢山あります。三朝温泉は二番手ぐらいでしょうか。
 12月3日早朝、家内と共に金沢から雷鳥に乗り込みました。松任駅から金沢まで普通列車で来て乗り込んだのですが、何と雷鳥は松任に止まるのでした。家内からブーイング1回目。私の大きな勘違いでした。最近は、インターネットでJRの切符を買うのが常ですが、始発が「金沢」、目的地が「鳥取」と入れるといくつかの選択肢が出てきます。その中から都合の良い時間を選んだらそうなってしまいました。家内が再び『何で「サンダーバード」でなくて「雷鳥」なの』と聞きました。「サンダーバード」の方が止まる駅も少なく早いのに、大阪での待ち時間が都合の良いのが出てくるので「雷鳥」になったようです。ブーイング2回目。大阪からは鳥取方面に「はくと」という列車がでています。それは終点が、三朝町近くの倉吉駅だったのですが、私が終着駅が「鳥取」とばかり思いこんでいたので、倉吉まで行けるのに鳥取で降りることになりました。ブーイング3回目。おまけに鳥取からレンタカーで三朝まで行く予定にしてあったのです。また鳥取駅前には借りようと思っていたレンタカー屋さんがなく、鳥取の次の駅近くにあるレンタカー屋さんを予約してありました。鳥取からタクシーでそこへ向かいました。車はナビ付きだったのですが、それも古いナビで扱いにくくて大変でした。いくつかのブーイングと苦難を乗り越え、時間を無駄遣いしながらどうにか三朝温泉の宿にたどり着くことが出来ました。「あー、疲れた」夫婦での旅行は喜びも二倍ですが、疲れも二倍ですね。
 反省:インターネットでキップを買うのは便利だけど、事前の最低限の知識は必要なんだなー。

  温泉はいいな

 周囲を田園と小高い丘に囲まれ、しっとりとした川の流れに沿うように宿の並ぶ三朝温泉は、山陰の名湯として昔は与謝野鉄幹・晶子夫妻、島崎藤村、有島武郎などの文人が数多く訪れたそうです。私たちの泊まった宿は、旅行案内書にも紹介されている大きな旅館でした。最近流行の露天ぶろ付きのお部屋ではありませんでしたが、1階にある大きなお風呂には午前1時まで入れます。朝は5時から入れました。深夜に入れないのがやや不満でしたが、緊急で予約した旅館なので仕方ありません。宿に着いて、来た道筋を反省しながらくつろいでいると食事の時間になりました。料理は普通でしたが、ゆでたカニが美味しくありません。身が痩せていて甘みが少ないのです。せっかく松葉蟹の本場に来たのにガッカリでした。旅館が大きすぎて、女将の眼が隅々まで届かないのかもしれません。でも仲居さんの接客態度は、とても良かったので気持ちは良かったです。何回か入った温泉も最高でした。湯量が豊富で、肌に優しい感じです。身体も暖まりました。世界でも有数のラジウム含量だそうです。皆さんも、一度ご体験ください。

  研修会初日

  12月3日、遅い朝食をすませ昼前に会場に向かいました。会場は旅館から車で10分程の距離にある三朝町総合文化ホールです。到着が早かったせいか参加者はまだまばらです。時間もあったのでホール前にある食堂で昼食をとることにしました。朝食が中途半端な時間だったのであまり空腹という感じではなかったのですが、午後1時から始まる講習会が5時までビッチリの予定になっていたので、胃の空いたところを埋める気持ちでした。店の中は、居酒屋も兼ねたような作りでした。カウンターに腰をかけて店内を眺めているうちに、注文したラーメンが出てきました。初めて食べる山陰のラーメンをすすりながら、以外に美味しい事に気づきました。麺は細く、スープも程良い塩加減と甘さです。さっぱりとした気分にしてくれる、その時の腹具合にピッタリの食べ物でした。
 12時半に少し遅れて開会式が始まりました。主催であるNPO法人未来の理事長さんと三朝町長さんの歓迎のご挨拶でした。少し気になったのは、大きな会場の前3分の1が座る場所として指定してあったことです。今回で3回目になるので参加人数も減って来ているのでしょうか。もしそうなら大変残念です。
 開会式が終わり、参加者はAB 、2つのグループに分かれて研修会が始まりました。私はA 、家内はB です。私のグループは、このマンスリーニュースでも何回かお話した高塚人志先生の「すてきなあなたになるために 〜豊かな人間関係づくりを学ぶ〜」のワークショップです。先生のお話を聴くのはこれで4回目ですが、高校生と幼稚園児の長期交流のなかでやる気のなかった高校生が「自分も役に立っているんだ」という気持ちが育って、眼が輝いて来るというお話は、本当に全国で取り入れて欲しい取り組みと思います。週刊誌にも何回か紹介され、現在は鳥取大学の医学生が幼稚園児と交流を持っています。医学という人間を扱う仕事で、コミュニケーションの大事さを学ぶ良い機会になっているという報告は、人間味のある医師を育てる大きな力になりそうです。この取り組みは、鳥取大学のみならず、横浜市大医学部や東京医科歯科大学へも拡がっています。
 お話に続いてコミュニケーションゲームです。参加者がいつの間にか仲良くなっている楽しい時間です。人間は1人では生きられない。人間嫌いと思われる人も本当は人との交流を求めているのです。人との交流の中で信頼が生まれ、生き甲斐が生まれ、幸せな気持ちも生まれてくるのです。そうなれば自分が人の役に立っているという気持ちも生まれ、生きる力を生み出してくれるでしょう。
 この基になるのは人と人とのコミュニケーションです。他人を理解し、自分も理解してもらう。人の話を良く聞く事からお互いの理解が始まります。
 相手の眼を見てお話を聴いていますか。相手の気持ちを考えながら、自分の考えを伝えていますか。
 高塚先生の説得力あるお話は、何回聴いてもうなづくことばかりでした。
 高塚先生のお話の後、講演会場に戻って、コミュニケーション授業の成果報告を聴きました。他の高校での取り組み、小学校での取り組み、遠く離れた沖縄の高校での始まったばかりの取り組みなどが語られました。鳥取でまかれた種が、日本の各地で実を付け花開こうとしています。

  メアリー・ゴードンさんのお話

 カナダで「共感教育」という取り組みをされているメアリー・ゴードンさんが2日目にお話されました。もちろん英語ですが、同時通訳付きです。
 日本ではまだ聞き慣れない「共感教育」という言葉ですが、「共感」を広辞苑で調べてみると、「他人の体験する感情や心的状態、あるいは人の主張などを、自分もまったく同じように感じたり理解したりすること。同感。」と書いてありました。英語では、Empathy(エンパスィー)になります。
 ゴードンさんは、「共感教育」こそ平和な社会を作るために必須の教育と言われました。カナダでもいじめが問題になっているそうですが、日本と同じようにちょっと姿が悪いとか、話し方がおかしいとか、自分より弱い立場にある子どもがいじめられるのです。このいじめの起こる基が「共感教育」の不足であるという研究結果が示されているそうです。
 共感性は家庭から育っていきます。赤ちゃんと親との感情のやり取り(眼と眼、言葉の交換、肌の触れ合い)を繰り返すことで、子どもは共感性を根付かせ育んでいきます。もともと持っている共感性がいかに育つかは、親子の交流の仕方に大きく左右されると話されました。
 ゴードンさんは、「共感の根」を育てるための授業を10年前に考えて実践されています。今ではカナダで2000以上の授業が行われているそうです。赤ちゃんとその親が月に1回1学年を通じて教室を訪問します。毎月訪れる赤ちゃんの変化を子ども達に見せるのが目的です。身体の成長だけでなくお母さんへの甘え方も観察します。赤ちゃんは子ども達に好き嫌いの感情なく笑いかけ話しかけてくれます。いじめっ子の子どもも赤ちゃんの笑顔には笑顔で返さざるを得ません。こうして共感性が育っていくのです。
 日本の取り組みもカナダの取り組みも、求める所は同じなのですね。
 
 学生時代、一度だけ鳥取を訪ねた事がありました。砂丘にたたずんで日本海を見ていました。あれは恋に破れた時だったかな。遠い記憶を確かめる気もなく鳥取を後にしました。


   
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