おねしょ(夜尿)について

 11月ももうすぐおしまいです。1年は早いです。年をとるとそう感じます。私も今年60才という年令を迎えたので、特にそう感じるのでしょう。小学校の頃は、1年が長く長く感じられたのに不思議です。その頃は、クリスマスもお正月もずっと遠くに思えたものです。だから、近づいてくる1日1日が楽しかったです。歌でも「もういくつ寝るとお正月」というのがありました。今はその感動も無くなって、「あー、またか」です。悲しいな。
 ところで、今月のマンスリーニュースは、おねしょのお話にしました。今更「おねしょ」と言われるかもしれませんが、これまでマンスリーニュースで、くわしく取り上げたことがありませんでした。最近、年令の大きな児童の「おねしょ」が、アラーム療法を使って4人ほどとても効果があったので皆さんにご報告することにしました。困っている方がおられましたら、お伝え下さい。

  「おねしょ」とは

 「おねしょ」とは、「夜尿」とも言いますが、夜寝ている間に尿が漏れてしまう現象です。生まれたばかりの赤ちゃんが、尿や便をたれ流すのは仕方ありません。赤ちゃんの尿や便は、親にとってはにおいも形もそれ程イヤな感じのする物ではありません(?)。私の体験では、尿は気にならなかったけど、便は「どうも」という感じでした。愛情が足りなかったのかなー。ついつい便が出ていると、「お母さん、便だよー」と叫んでいた思い出があります。30年前の事だから、それだけでも頑張ったと許してね。
 さて、何歳から「おねしょ」というのでしょう。先日4才の男の子のお母さんが、「おねしょ」で困っていると相談されました。お母さんには「4才だったらまだ、おねしょとは言えないね」と答えました。年令的には、5〜6才以後も「おもらし」をする場合を「夜尿症」と言って良いでしょう。ですから、一応、学校に入っても続く場合は「夜尿症」と考えてください。夜尿は、幼児では病気とは言えないわけですが、年令が行く毎に減っていきます。月に1回以上夜尿のある子は、5才で10〜15%、小学校高学年で5%、18才以上で1%と言われています。
 夜尿の原因は何でしょうか。原因がはっきり分かっているわけではないのですが、一つは膀胱のコントロールが未熟なこと、二つ目は膀胱に尿がたまっても夜起きることが出来ないこと、三つ目は、夜間に分泌される尿を減らすホルモンが十分に分泌されないこと等が考えられています。さらに、中には腎臓や尿道、膀胱に異常が認められる場合もあります。まれには、脳腫瘍が出来て、頭の中のホルモン分泌が異常を来している場合もあります。夜尿症でもいろいろです。一度は、小児科医に相談してくださいね。
 さて、夜尿のタイプが、その経過によって二つに分けられています。夜尿でも、幼児期からずっと続いているタイプと、一時無くなっていたものが、再び始まるタイプです。続いているタイプは、親も昔夜尿があって、親の治った年令と同じ頃に治ると言われます。この場合、生まれつき膀胱のコントロールが未熟なタイプが多いと言われています。無くなっていた夜尿が再び始まるタイプは、精神的なストレスが引き金になって起こることが多いと言われています。

  夜尿症の治療

 夜尿症の治療の時期は、一般的に6歳以後で、家族や本人が気にしだしてからが多いようです。
 治療の第1は、毎日の生活の中から始まります。夜尿は、これをすればすぐ治ると言うわけでは無いので、気長に付き合う覚悟が必要です。よく聞かれる言葉ですが「起こさず、あせらず、しからず」を守ってあげましょう。でも夜尿が毎晩あると、洗濯係のお母さんやお父さん、お婆ちゃんにとっても大変な負担になります。おねしょシーツや夜間だけのおねしょパンツも使って、「おもらししても、気にしないで」という気持ちを伝えてください。子どもは、自分のおねしょがいかに家族に迷惑をかけているかをちゃんと知っています。しかし、言葉でそういう子どもはいませんから、おねしょに悩む親にとっては、「今日もまたかー」という顔をついしてしまいがちです。おねしょシーツをしておけば、少しは負担も減るでしょう。子どもも好きで、おねしょをしているわけではないのです。
 第2の治療として、膀胱拡張トレーニングがあります。子どもによっては、膀胱に貯めておける尿量の少ない子がいます。そういう子どもには、昼間の排尿を出来るだけ我慢させてみます。それを繰り返すことで、膀胱の容量が増えて、夜に漏らさなくなるというものです。
 第3の治療は、飲み薬による治療です。薬によって、時には大変効果のある場合もあります。使ってみたら、翌日から効果が出て、それがきっかけで治ってしまうこともあります。薬を止めたら、また始まる場合もあります。でもガッカリしないでください。親よりもガッカリしているのは、本人なんですから。「おねしょは、いつかは必ず治るよ」と子どもに言ってあげてください。
 第4の治療は、アラーム療法です。おねしょが出始めたときにぬれやすい場所(パンツの濡れ初め部分と思われる場所)に、センサーを付けて、そのセンサーにはコードを介してブザーが付いています。おしっこが出だすと、そのセンサーがぬれます。ぬれるとその信号が伝わりブザーを鳴らします。その時、すぐ起きる子もいますが、起きなかったら親が起こしてあげて、お便所で排尿です。それを繰り返しているうちに、ブザーが鳴らなくても、膀胱が大きくなっただけで起きるようになっていきます。アラーム療法は、解離(かいり)型夜尿症と言って、昼間の膀胱は尿をたくさんためられるのに、夜はためられないという、小学校中〜高学年の子どもの夜尿に効果が大きいと言われています。当院でも、7才、8才、9才、10才の4人でアラーム療法をやってみましたが、4人全員に大変効果がありました。子ども達の笑顔がとても印象的でした。


   
目次へもどる   
次ページへ