Q:食物アレルギーが増えているそうですが、

      入園前に検査などしておいたほうがよいでしょうか?

 平成21年が始まりました。遅ればせながら12月号をお届けします。ところで、温暖化の影響で雪のない正月をまたまた迎えてしまいました。関東では当たり前ですが、北陸では何となく違和感を感じるのは私だけでしょうか。雪のない正月もたまには良いですが、毎年だと何となくおかしな気持ちです。エコロジーが叫ばれて随分経ちますが、なかなか進まないのが現状です。一人一人の意識が大事と思いますが、いつもの生活に流されている自分を発見します。多くの物資に囲まれた生活に慣れきってしまっています。コンビニやスーパーの品数の多さは、生活が何も変わってないことを見せつけるようです。エコロジーってむずかしいなー。
 さて、今月のお話しは、「食物アレルギー」についてです。この面でも、人間生活の基本である「食べる」という事についての問題点を突き付けられているように思います。

 食物アレルギーとは、食物を食べたあとアレルギー反応をもとに蕁麻疹や喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒュー)、また重症になれば呼吸困難やショック症状、時には死に至るアレルギーの病気です。2つ以上の臓器症状、例えば蕁麻疹と嘔吐のように皮膚と胃腸の症状をともなう場合は、アナフィラキシーと呼び重症のサインと考えられます。食物を食べてから症状が出るまでの時間もいろいろです。即時型は2時間以内、遅発型は3〜8時間、遅延型は8時間〜数日です。原因と思われる食物(アレルゲン)を、少しずつ与えて負荷試験をしてみると即時型が70%、遅発・遅延型が25〜50%の結果でした。即時型は、卵、牛乳、小麦、魚介類が多く、遅発・遅延型は、大豆、米、肉類が多いようです。
乳幼児アトピー性皮膚炎でお医者さんを受診した子どもの80%が、卵、牛乳、小麦、大豆、魚介類、米にアレルギーを持っていました(右のグラフに原因食物を示しました)。事実、アレルギーのある食物を食べると皮膚炎が増悪する患者さんも見受けられます。しかし、アレルギーを持っていても皮膚症状と関係しない場合もあります。遅発・遅延型で症状が出る場合は、食べた時間と症状が出るまでに長時間を要するので、判定が難しい場合もあるでしょう。このような場合は、食物と皮膚症状の日記を付けて関係を見つける方法が有効です。
乳幼児期に、食物と関係してアレルギー症状が一度でも出た場合は、入園前に皮膚や血液検査をしてアレルゲンを確認しておく必要はあると思います。  下に示した表は、即時型アレルギーの年令別原因食物です。年令によってアレルギーを起こす食物が変わる訳です。
              
最近は、食物アレルギーが増加していると言われます。食生活の欧米化は、卵や牛乳、小麦、肉類を食べる機会を多くしました。乳幼児アトピー性皮膚炎の患者さんが受診した時、何にアレルギーかを調べてみると、多くの患者さんで卵が陽性になります。また、牛乳も多いです。卵を食べたことが無いのに陽性にでることもあります。これは、母乳を与えているときに、母乳を介して微量の卵たんぱくが赤ちゃんの身体に入って、卵アレルギーになった可能性もありますが、誰もがそうなるという事ではありません。でも、妊娠中や授乳期には、偏食を避けてバランス良い食事を摂ることが大切です。最近の話題は、小麦、ピーナッツ、ゴマアレルギーが増えていることです。パンやうどん、パスタ類、またピーナッツバターやゴマ成分の健康食品を食べる機会が増えた事が原因でしょう。アメリカでは、年間80人がピーナッツアレルギーで死亡しています。
 
食物アレルギーの治療の原則は、アレルギー症状を起こす食べ物は食べないことです。検査でアレルゲンが見つかっても、すべてが皮膚症状と関係しているわけではないので、症状が出る食物のみ除去するようにしたいです。過度の制限は、子どもの成長にも影響します。除去する食物が多ければ、それに代わる代替食を与えることも重要です。幸いにも乳幼児の食物アレルギーは、年令と共に軽くなっていきます。3〜6ヶ月毎に症状が出るかを確かめる負荷試験も勧められています。米、大豆、肉類、小麦、卵、牛乳の順に症状が出にくくなっていきます。また、年令では早い場合は1才過ぎ、多くは2〜3才になると食べても大丈夫になりやすいです。長くアレルギーが残りやすい食物は、ピーナッツ、魚介類、くだもの、そば、ゴマなどです。食物アレルギーを予防するには、妊娠中や授乳期のバランス良い食事、母乳栄養、加水分解ミルクの利用、離乳食の生後6ヶ月以後の開始などが有効と言われています。治療や予防にあたっては、その子に合った方針を主治医や保育所の栄養士さんと十分相談しながら進めることが大切です。

  参考文献:(1)ホップ・ステップ!食物アレルギー教室 柴田瑠美子・伊藤和枝編著 南江堂

      (2)食物アレルギー診療ガイドライン 作成:日本小児アレルギー学会 協和企画


     
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