スギ花粉が飛んでますよー

 一時減少していたインフルエンザが再び勢いを取り戻しています。これまでの A 型に代わって、 B 型が流行し出しました。すでに A 型にかかった人が、再び B 型にかかっています。一シーズンに二回もかかるなんて「もう、いやだよー」という感じです。でも更に上を行く人もいます。すでに A型に二回かかった人もいるのです。そうです・・・ ソ連型と 香港型です。ですから、今度 B 型にかかると三回目という事になります。数日前、このA型に2回かかった娘さんが、熱を出して受診されました。恐る恐る迅速検査をしてみたところ、B型のインフルエンザ陽性。付き添って来られたお父さんはショックで肩を落とされていました。2回きちんとワクチンを打ったのに。でも軽症であったことが何よりと納得してもらいましたが・・・。インフルエンザの何としつこいことでしょう。外出から帰ったら、うがいと手洗いを忘れないでくださいね。
 さて今月のマンスリーニュースは、「スギ花粉が飛んでますよー」です。

 2月28日、当院のDurham(ダーラム)型の空中花粉捕集器に197個のスギ花粉が観測されました。石川県内14カ所の観測地点で毎年2月初旬から始まるスギ花粉と、それに続くイネ花粉観測に当院も参加しています。
地球上に生きている生物の一つであるスギやイネが、自らの生き残りをかけて行われる花粉散布が、人間に花粉症という病気を起こすという初めての報告は、古代ローマの名医ガレノス先生の枯草熱までさかのぼります。
 1964年、日本の斉藤洋三先生は栃木県日光地方でアレルギー性結膜炎と鼻炎を訴えとするスギ花粉症を発見して報告しました。これが日本独特のスギ花粉症発見の第1号です。その後も、多くの植物による花粉症が報告されています。下にスギ花粉の顕微鏡写真を示しました。スギ花粉には特徴的な右端の突起(専門的には花粉管口の突出)が見られます。
石川県の花粉症対策委員としての仕事は、毎日の花粉数観測と報告に加えて、スギ花粉飛散開始時期を予測しなくてはなりません。それぞれの部門のデータを持ち寄って、今年はいつ頃から飛び始めるかを予測して北國新聞に発表するのです。毎年1月下旬に開かれる委員会で部門ごとの予測発表が行われますが、今年出席した部門は、金沢大学附属病院耳鼻咽喉科、日本気象協会北陸支店、石川県林業試験場、石川県保健環境センター、2つの耳鼻咽喉科医院、1つの眼科医院と当院でした。金沢大学附属病院耳鼻咽喉科の先生は、医王山のいつもと同じ地域のスギ林を観察して、その花の着いている状態から飛散数は昨年よりやや多く、降雪が無ければ飛散時期は2月中から下旬という予測をしました。日本気象協会北陸支店の方は、気象的な条件だけで予測をされて、花粉飛散数は前年の夏の気温が高く、日の照る時間が長いと花芽の生成は多くなる方向に動き、逆の場合は少なくなります。また、花粉が多く飛んだ翌年は少なくなる傾向があることから、今年の飛散数は例年並みと予測されました。A耳鼻咽喉科医院の先生は、スギはオス花の花芽は夏にでき、秋は休む。その後、当地では12月から1月の間に眠りから覚めて成長するが、オス花は気温に従って成長を続け、毎日の気温を合計した温度が一定値を超えると開花に至るというスギの性質を考えた予測をたて、飛散予測日は今後の気温条件によって変化するが正確に予測出来ると言われました。石川県林業試験場の方は、加賀地域約35カ所でオス花着生量調査を行い、「平年並、あるいは2008年よりやや少ない」という予測をたてられました。B耳鼻咽喉科医院の先生は、毎年の季節前スギ花粉飛散数から予測すると今年の飛散数は例年よりやや多く、飛散開始日は2月下旬になると予測されました。

これらをまとめて新聞に発表しました。

 1月27日の北國新聞には大きな文字で「スギ花粉 県内 今年も大量」「来月中旬から飛散か」・・・1000個を超えると花粉症患者のほぼ全員が発症するとされる、1シーズン通しての1平方センチ当たりの花粉量は金沢で2000個、加賀南部で4000個、能登で6000〜8000個と予測した。昨年に比べれば若干少なめだが、昨年6〜8月の高温多雨により今年もスギの花芽をやや多く確認しており、大量飛散は続くとみられる。

 さて、2月2日からスギ花粉が県内数カ所で少数観測されだしました。そして次第に増加、地域も拡大しました。12日からは県内の全域で観測され、花粉数も二桁から三桁にまで増えています。昨年と異なり、今年は雪が少ない関係で飛散予測時期が大幅に狂うことはありませんでした。こうして、委員全員がそっと胸をなでおろしているところです。委員皆様のお陰であり、委員会での熱い討論が思い出されます。これらの情報によって、患者さんが、症状が出る前に治療を開始でき、出来るだけ苦しまないですむような予防治療に役立てば、医師として、また研究者として本当にうれしいことです。
スギの次はイネですよ。油断しないでね!

参考ホームページ    @石川県医師会の花粉情報欄
            http://www.ishikawa.med.or.jp/ 
            A今村耳鼻咽喉科医院
   http://plaza.umin.ac.jp/~immENT/pollen/sim/ishitempX.htm
            B石川県林業試験場
             http://www.pref.ishikawa.jp/ringyo/
            C日本気象協会
            http://www.jwa.or.jp/content/view/full/2591/

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