インフルエンザ大流行!?   

 昨年のインフルエンザ(以下:インフル)は、例年になく少なかったのですが、今年は1月の連休明けから急激に患者さんが増えてきました。その後1週間、当院の待合い室は椅子も少なくご迷惑をかけました。学校での予防接種も中止になり、メーカーもワクチン製造を控え、また流行ウィルスが3種類と皮肉な条件が重なったこともその一因かもしれません。2月に入って落ちついて来ましたが、三種類と聞くと今後も予断を許しません。インフルへの対応を勉強しましょう。
今年のインフル
 A香港型、Aソ連型、B型の3種類のウィルスが流行すると予測されています。「トロイカ」風邪と新聞に載っていましたが、「トロイカ」とはロシア語で、三頭立ての馬車のことを言います。馬に3回も蹴られたら大変なことですが、今年はインフルに3回かかっても不思議はないということです。
インフルの特徴は:
 流行の仕方 説明の必要もありませんが、爆発的という表現がぴったりです。あたかも波が押し寄せるようにピークを迎え、サッと引いていきます。感染力が強く、潜伏期間も短いためです。家族も短期間のうちに全滅。子供よりも連れてきたお母さんの方が、ひどそうな顔をしていることがしばしばです。
 発熱 咳、鼻水、のど痛に続いて 39 〜40 ℃の高熱が3日から5日、長いと1週間続きます。3、4日を過ぎると、さすがに勢いもなくなり、夕方から夜にかけて上昇します。時には、一度下がった熱が再び上昇.......なんてこともあります。普通の風邪に較べると「しつこい」というのが患者さんの一致した意見です。言ってみれば風邪の王様です。王様には逆らわず、じっと通り過ぎるのを待ちましょう。 
 咳や鼻水 鼻症状に伴って強い咳が続きます。特に気道の過敏な患者さんや、喘息の患者さんは要注意です。引き続いて喘息発作が出ることもあります。 
 全身症状 子供でも同様ですが、特に大人では、全身のだるさを訴えることが目立ちます。お母さんの場合は、家族の看病疲れも重なっているのでしょう。ごくろうさまです。
 胃腸症状 気持ちが悪い、吐く、下痢をするなどの胃腸症状が出ることもあります。しかし、症状としては軽く一過性です。  
 身体の痛み 幼児でも手足の関節や筋肉、からだの痛み(腰痛など)を訴えることがあります。実際に筋炎を起こして歩けないということもあります。また、年令の行かない子が激しい頭痛を訴えて心配したこともありました。 

インフルの治療は:
 インフルの治療と言っても、現時点で効果のある治療薬はありません。ただ、抗インフル薬として、アマンタジンという薬があります。インフルAウィルス感染早期に使うと治療効果が認められていますが日本では許可されていません。
 結局、高熱や咳に対する対症療法と安静や保温などの生活療法が主な治療になります。
 熱に対して 熱は高温で「しつこい」ことを頭に入れて治療にあたります。40 ℃出ても風邪からの熱で頭がおかしくなることはありません。(まれな合併症である脳炎なら別ですが。)むしろ熱があるほうがウィルスに対する抗体を作り易いのです。熱のためにグッタリしていたり、水分もとれないようなら解熱の坐薬や飲み薬を与えてください。それでも熱の勢いのいい2日間位は、1℃程しか下がらないかもしれません。
 解熱剤の種類 解熱剤は、年令の小さい子では、アセトアミノフェン(当院のアンヒバ坐薬)が最適です。飲み薬では、小児用バッファリン2C錠がこれにあたります。インフルにアスピリン(アセチルサリチル酸)の入った解熱剤は避けてください。ライ症候群という特殊な脳症を起こすことがあります。
 風邪の時の生活は 安静と保温と水分補給が大事です。熱があっても元気な子供をむりやり布団に押し込む必要はありませんが、日頃足りなかった心の交流の時間とでも思って、余裕を持って看病してあげてください。インフルは、麻疹やおたふくかぜ同様、学校伝染病の第2類に分類されています。それには解熱後2日たってから登校するように指示されています。お母さんあせらないで!
 合併症 細菌感染による肺炎、まれに脳炎を起こします。
 インフルの予防 日頃疲れすぎない生活を守りましょう。予防接種や帰宅後のイソジンうがいも大事です。紅茶や緑茶の成分であるカテキンがウィルスを殺すといわれ、そのうがいが推奨されています。飲んでも効果は少ないそうです。


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