子供の気になる症状   

 蒸し暑い日々が続きますが、体調を壊さないように気を付けてください。6月に流行していた手足口病も少し落ちついてきました。今年の流行は、むとう小児科開業以来の猛威でした。続いてへルパンギーナと思われる夏かぜが、チラホラと見られます。本当に、毎日が風邪との戦いです。疲れてきたお母さんも多いと思いますが、子供は1年1年強くなります。少し力を抜いて頑張ってください。さて、今月は子供の気になる症状特集を組んでみました。子育ての不安を少しでも減らせれば幸いです。

首のグリグリ

 子供の首、あるいは頭の後ろにグリグリと腫瘤を触れることがあります。気付いたお母さんは心配そうにしています。お母さんの頭の中は、悪性リンパ腫というような悪い病気の名前が駆けめぐっています。しかし、期待に反して、その多くは正常なリンパ節である場合がほとんどです。風邪気味のために、少し大きめで痛みを伴うこともあります。時には、EBウィルスという少し変わった風邪ウィルスの感染で、見た目に腫れていることが分かるほど大きく、かつ数多く腫れることもあります。乳児で、高熱が出て、首のリンパ節が大きく腫れているときは要注意です。心臓に障害を残すことのある川崎病の可能性があります。お母さんの一番恐れている、悪性リンパ腫は、白血病同様子供の癌ですが、白血病に較べるとまれな病気です。子供の白血病は、日本で年間1000人ほど発病しています。

お腹が痛い

 腹痛ほど軽症から重症までバラエティーに富んだ訴えはないでしょう。家では苦しそうな顔をしていた子供が、外来へ来て、おもちゃを触っているうちに元気になってしまうことはよくあります。逆に緊急手術を要する急性腹症ということも、たまに経験します。いつもの腹痛だろうと思っていたら、隠れていた重症な病気が突然現れるということもあります。腹痛は小児科医にとって、大変気を使う症状なのです。いくつかの腹痛例についてお話しします。
 便秘による腹痛:転げ回って痛がっていた子供が、浣腸で硬めの便を出すとまったく元気になってしまうことがあります。
 風邪による腹痛:風邪による腹痛は、便秘に次いで多い腹痛の原因です。腹痛は弱まったり強くなったり、外来に来たときはケロッとして、お母さんをガッカリさせることもあります。発熱や下痢、嘔吐を伴うことが普通ですが、吐いた後や、便の出た後は腹痛もやわらぎます。内科的腹痛で頑固な物の一つに腹性紫斑病(アレルギー性紫斑病ともシエーラインヘノッホ紫斑病とも呼ばれる。)があります。時には、外科の病気と間違われて手術をしてしまうこともあります。腹痛は、子供に不安を与えます。スキンシップのつもりで、優しくお腹をさすってあげてください。
 急性腹症による腹痛:急性腹症とは、緊急の手術や処置を必要とするような腹痛です。子供の場合数は少ないのですが、乳幼児では腸重積や腸閉塞、幼児や学童では急性虫垂炎や急性膵炎、先天性胆道拡張症などです。さらに高齢児では、胃十二指腸潰瘍やその穿孔、婦人科的疾患や外傷も頭に入れておく必要があるでしょう。急性腹症の診断は、知識と経験が必要です。私にも、いくつかの苦い経験がありますが、「教科書どうりにはいかないなー。」というのが本音です。
 心の状態による腹痛:子供の心の病気が問題になっていますが、腹痛を頻回に訴える子供もよく受診します。家や学校での自分の位置に自信が持てないなど、不安な気持ちが腹痛の基になっているのだと思いますが、ストレスの多い職場では大人でさえ胃に穴があくこともあるのですから、心と身体がいかに密接につながっているかが理解できるでしょう。お腹の痛みを訴える子供に「またか」と思わないで、ゆったりとした気持ちでお話しを聴いてあげてください。子供の味方になってあげられるのは親しかないのですから。

 目次へもどる      次ページへ