喘息治療最前線   

 さて、今月も喘息について勉強したいと思います。特にその治療について最近の考え方をお話しします。
喘息は予防する
 喘息発作は、出来るだけ出さないように、予防治療を心がける。この考え方が大変重要であることが分かってきました。以前は、発作が出たら治療するという考え方だった為に、小児の重症喘息児がたくさんいて施設入院療法が花盛りでした。発作を繰り返すたびに気管支は敏感になり、喘息が重症化していたのです。その後研究が進むに連れて、発作が出ない期間が長ければ長いほど気管の敏感さがとれて気管が強くなり、発作が少なくなるという結果がでました。
喘息は気管の炎症である
 発作が無ければ強くなるという考えの基になっているのが、気管支喘息が気管の炎症であるというものです。つまり、アレルギー反応を始まりとして起きた炎症ということです。喘息の気管支を調べてみると、炎症を起こす沢山の細胞が集まって化学物質を出しながら気管を腫れさせて(炎症)いたのです。この腫れがさらに多くの細胞を呼び込む指令を出し、またまた腫れがひどくなる悪循環を起こしていました。この研究結果から喘息の治療が、起こったらしずめるという治療から、起こさないように予防するという考えに変わってきたのです。
喘息発作予防治療の選択
 軽い発作が年に2〜3回しかないのに、予防薬を続けてのむ必要は無いでしょう。月に1回でも中から大発作があれば、予防が必要です。また、秋だけ発作が多い場合には、この季節だけ予防治療するのも理にかなっています。要は患者さんの状態に応じて家族の要望も考えながら、治療のメニューを選べばいいのです。目標は、出来るだけ発作を少なくして気管の敏感さがとれるように導き、発作の寛解(喘息では治癒とは言いません。寛解dつまり発作の休業状態のことです。)を目指すことです。
喘息発作予防薬のいろいろ秋です...自然の中へ
  抗アレルギー剤
 現在、抗アレルギー剤はたくさんの種類が使われています。小児で使える数は限られていますが、当院ではおもにケトティフェンを処方しています。喘息だけではなく、アトピー性皮膚炎にも使っていますが、子供が飲みやすく安全性も高い薬です。効果は、その名のとうりアレルギーを抑える、つまり炎症を抑える作用があります。また、粘膜を強くする印象もあります。この薬だけで発作が無くなればいいのですが、そうもいきません。大きな(風邪ひきなど)引き金があれば、発作は起こってきます。普通は、他の気管支を拡げる薬を併用します。
  ベータ刺激剤
 交感神経のベータ受容体を刺激することによって、気管支を拡げ発作をやわらげる薬です。内服したり、吸入したりして使いますが、喘息治療で一番よく使われます。甘く飲みやすく加工出来る薬で子供に飲ませやすいため、予防薬として長期に使うこともあります。ところが、長期に使うと慣れが出てきて効果が落ちるという意見もあります。副作用としては、動悸や手のふるえなどがあります。
  キサンチン製剤
 テオフィリンという成分の薬ですが、気管を拡げるだけではなく、炎症を抑える作用もあることが分かってきました。製剤としてはテオドールやスロービットなどがあります。テオフィリン時間投与法といって、定期的に内服して発作を予防する治療法に使われます。錠剤や顆粒、シロップもありますが、苦いのが難点でした。最近、甘い粉薬が開発され、幼児でも飲ませ易くなり期待されています。
  吸入薬      
 小児の喘息では、インタールがよく使われています。家庭に吸入器を置いて、1日3、4回発作予防のために毎日吸入します。この時、ベータ刺激剤も一緒に入れて、気管支を拡げながら吸入することが大事です。それは、特に重症の喘息児ではゼーゼーといってない時でも、気管支の先のほうが狭くなっているからです。先端までインタールが行き渡る配慮が必要です。最近では、ベクロメサゾンという気管支から吸収されないステロイドホルモンの吸入が小児でも行われています。
 これらの治療は、喘息の重症度をみながら選ばれます。

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