O-157   

 何となくうっとうしい日が続いていますが、身体の調子は如何でしょうか。早く梅雨が明けてほしいですね。
 ところでお腹の調子どうでしょう。最近は、子供が下痢をすると飛んでこられるお母さんが増えています。D- 51 (機関車の名前:デコイチ)ならぬO-157に異常に神経質になっています。それにしても病原性大腸菌:何と恐そうな名前でしょうか。しかし、いたずらに病気を恐れても仕方ありません。正しい知識を得て対処しましょう。
病原性大腸菌とは
人間の下痢の原因としての病原性大腸菌には、四つのタイプが知られています。
 ^病原性大腸菌 _侵襲性大腸菌
 `毒素性大腸菌 a出血性大腸炎原因菌
 ^から`までの大腸菌は以前より知られていましたが、今回問題となっているのがaの菌です。この大腸菌は新しいタイプで、1982年アメリカで出血性大腸炎の集団発生があり、大腸菌O-157がその原因菌であることが判明しました。この菌の産生するベロトキシンは志賀赤痢菌の志賀毒素と同じものです。病原性大腸菌の中には同じ様な毒素を作る物もあるのですが、O-157の毒素は産生量が多く志賀赤痢菌に匹敵すると言われます。
 日本での発生例の最初は1984年で、数例が報告されています。その後1990年、埼玉県浦和市の幼稚園で井戸水を感染源として、268名の集団発生があり2名が死亡しています。これを契機に注目されるようになりましたが、毎年2、3回の散発例や集団発生が報告されていました。今回、今年5月 28 日の岡山の集団例が元であたかも新しく発生した恐ろしい菌というイメージを与えてしまいましたが、それは新聞やテレビの反省すべき点だと思います。物事は正確に伝えるべきでしょう。
出血性大腸炎の症状は      
 初めの症状は、腹痛を伴う粘液の少ない水のような下痢です。その後下痢の回数は次第に増加して、1、2日で鮮血(新鮮な赤い血)が混じってきます。典型的な場合は便のほとんど混じらない血液だけの下痢になっていきます。この症状は4から8日で自然に治ります。しかし、5才以下の乳幼児や何か病気を持ったお年寄りの場合にはこの菌に対する感受性が高く、重症になる患者さんもいます。この時起こるのがすでに有名になった溶血性尿毒症症候群です。
溶血性尿毒症症候群って何
 症状は赤血球が壊されることによって起こる溶血性貧血、腎機能低下による尿毒症症状、血小板破壊による出血が主なものです。それに加えてしばしばケイレンなどの中枢神経症状も伴い死に至ることもあります。原因として明らかなのは、今までお話ししてきました、出血性大腸炎が主なものですが、原因が明らかでないものもあります。
出血性大腸炎の治療
 出血性大腸炎が疑われた場合には、早めに抗生物質を投与して菌が増えるのを抑えなくてはなりません。血便が見られたら、早めにその便を持って医療機関を受診してください。菌の検査には日数がかかるので、そのあいだにも抗生物質を服用しておきます。抗生物質は、普通テトラサイクリン系やニューキノロン系、ホスホマイシンなどが使われます。
感染を防ぐには
 汚染された食品を食べないことが、感染を防ぐことです。その為には、汚染された食物を調理したまな板の上で生野菜のサラダは作らないほうが賢明です。また、食品には十分な加熱をしましょう。飲料水にも注意が必要です。当然ですが食事の前には手を洗いましょう。また、もし病気が疑われた人がいたら、その便は衛生的に扱うことも重要です。いろいろお話ししましたが、どんな病気も一緒です。おかしいと感じたら、早めに手を打ってください。あまり神経質になることはありませんが、子供の症状をしっかりと観察することはどんなときにも大事でしょう。


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