アレルギー学会を楽しんできました   

 11 月28 日から 12 月 1 日まで、九州の福岡で開かれた日本小児アレルギー学会を楽しませていただきました。べつに勉強を楽しんだ訳ではなく(もちろん勉強もしましたよ)、それに付随して観光も楽しんだということですので悪しからず。
 しかし、私にとっては年一回のこの行事がエネルギー補給の大事なイベントでもあることもご理解していただきたいと思います。
 学会は 27日の水曜日からすでに始まっていたのですが、私は開業医ですのであまり休めません。28 、29 日と学会に参加して、せっかく九州まで行くのだからと 30、1 日は芸術で村おこしに成功した湯布院まで足をのばしました。さて、今回のマンスリーニュースは、小児アレルギー学会で興味ある発表の中から提供します。

小児アレルギー学会の話題から
 今年の小児アレルギー学会は、西間会長の熱意のお陰で例年になく三日間と長期でした(二日が普通)。ワークショップやらシンポジウムやら話題が豊富過ぎて、勉強不足の私には何を聴いて良いやら・・・・その中でも最近良く耳にするラテックスアレルギーの小児例の報告があったので、患者さんに接する臨床医としては重要と考え、よく聴いてきましたのでお伝えします。

ラテックスアレルギーとは?
 「ラテックス」・・聞いたことがない人も多いと思いますが、外科のお医者さんが手術の時にはめる薄手のゴム手袋の素材と言えば、「あー、あれか。」と思いついていただけたでしょうか。つまり生ゴムです。これまでラテックスによる遅い反応の接触性皮膚炎はよく知られていました。1979年初めてラテックスによる早い反応(即時型)の蕁麻疹を伴うアレルギーが報告されました。これは、急激なショック症状を引き起こし時には死に至るものです。アメリカ国内の発表では、主に医療従事者を中心にすでに 15人の死亡が確認されています。
 また、後からの研究で、ラテックスにアレルギーのある人は、果物(バナナ、キウィ、栗、アボガドなど)や野菜に対しても時にアレルギーを持つことが分かってきました。生ゴムも植物なのですから、患者さんが他の植物にアレルギーを持っていても良く考えてみれば納得がいきます。私は不勉強にもこれを知らなかったのですが、改めて勉強してみると大変奥の深いアレルギーだと思いはじめました。
 さらに、 10 月に宇都宮で開催された日本アレルギー学会での発表では、ラテックスアレルギーの人には、植物がストレスにあうと作り出す生体防御蛋白に対するアレルギーがあることが示されました。難しくなってしまいましたが、分かりやすく言えば、生ゴムに含まれる蛋白とフルーツの中に含まれる蛋白に同じものがあって、ラテックスアレルギーの患者さんは、両方に反応を起こすということです。しかし、この蛋白は植物がいじめられた時に作り出す蛋白(人間で言えば涙でしょうか)だそうです。何か SF映画を思わせる展開ですが、もしかしてラテックスアレルギーは、いじめられている植物の人間に対する復讐かもしれません。小学生の頃、教科書で見た生ゴムを採取している写真が思い出されます。確かに木の幹に幾重にもナイフで傷を付け、垂れてくる樹液を缶に貯めていました。植物にとって人間のこの行為は、多分いじめ以外の何物でもないでしょう。

ラテックスアレルギーの小児例
 前置きが長くなってしまいましたが、学会で発表された例をお話しします。患者さんは5才の男の子です。歯医者さんで治療のためラバーダムという生ゴムを含んだものを口の周りに当てていたところ、 15 分後に、その付近が赤くなり、喘鳴と呼吸困難が出現しました。アナフィラキシー反応と考えて緊急治療が行われ大事には至りませんでしたが、4才の時にもゴム風船を膨らませていて、やはり 15 分後に顔の腫れと蕁麻疹を認めていました。血液反応では、ソバ、バナナ、ラテックスにアレルギーがあることが示されました。家庭には、以前からゴムの木とキウィの棚があるそうで患者さんはよくゴムの木をさわったり、棚に登ったりしていたそうです。小さい頃からの接触がラテックスアレルギーを引き起こしたと考えられました。
 ラテックスアレルギーを防ぐには、自然を大事にして植物にも愛をそそぐことが必要でしょう!(水やりを忘れないようにしましょう。)

 お知らせ    
 年末は30日午前中まで診療いたします。
 年始は4日から普通どうり診療いたします。

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