食物アレルギーについて  

 最近、ソバアレルギーの学童が、給食に出たソバを食べて急死するという事件がありました。それ以来、食物アレルギーに対する関心が高まっています。当院へ来られる湿疹や喘息の患者さんでも、食物が関係すると思われる場合が、多いように思います。なぜこんなに増えているのでしょうか。アレルギー疾患は文明病と言われています。文明が進歩し、科学が発達するに連れて人間の世界にいろいろな変化が現われて来ました。食生活もずいぶん変わってきたと思います。保存料や着色料が、たくさん使われるようになりました。また、魚や家畜の肉を有効に利用するために、病気治療にたくさんの抗生物質も使われています。いろいろな研究によると、これらの科学物質が、アレルギー反応に影響を与えるという結果が報告されています。特に、アレルギーを増強する場合は問題です。美味しいものを、たくさん食べたいというのは、人間の逃れられない宿命です。昭和から平成へと、グルメブームは続いています。食物に対する身体の拒否反応であるアレルギー疾患は、人間に反省を求めているのでしょうか。

 食物アレルギーから逃れられるために

 食物アレルギーは、生まれる前から始まっています。お母さんの身体の中にいる時、お母さんの食べた卵や牛乳や大豆が、胎盤を通過して胎児に移行することがあります。その時、胎児がアレルギー体質を持っていると、それらの食物にアレルギーになって生まれてくる可能性があります。これを防ぐには、母親が妊娠中にバランスのとれた食事を心掛けることです。これで少しは、アレルギーの子供が生まれるのを防げるのでは、と思います。なぜなら、食物アレルギーは、同じ食物に多く出会えば出会うほど起こり易いのです。胎児も同じだと思います。
 生まれてからはどうでしょうか。新生児の腸は、食物を消化しきれずに大きな蛋白質も通過してしまいます。卵や牛乳や大豆の蛋白質は特にアレルギーを起こしやすいのですから、ひとたまりもありません。アレルギー体質を持った赤ちゃんには、これらの食物を遅めに与えるのが原則です(出来れば8か月以後に)。最近、気付くのは幼児で、米や小麦のアレルギーが増えていることです。パンを食べると湿疹がひどくなるというお母さんの観察から、血液検査でも陽性に出た1才7か月の幼児もいました。当然、小麦製品除去によって、湿疹が見違えるように軽快してしまいました。小児科医として日頃感じていましたが、この時は、本当に母親は名医だと感心しました。

 終わりに

 アレルギー疾患は、文明の発達と共に、増えていく可能性があります。食物アレルギーばかりでなく、花粉症もその一つです。人間の文化は後戻り出来ません(?)。しかし、食物アレルギーに悩まされた子供達は、その体験を肌に感じながら克服してくれると信じています。
 

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