結核、怖いですよ!

 梅雨はまだ明けていませんが、晴れた日は夏の蒸し暑さがよみがえる今日この頃です。ところで、今年は、冷夏なのでしょうか、それとも猛暑なのでしょうか。やはり夏は夏らしく冬は冬らしくあってほしいですね。地球が少しずつ変化しているのかもしれません。人類はその変化に何らかの影響を与えているのでしょうか。まー、難しいことを考えても仕方ありませんが、少なくとも地球上の生物が長生きできる環境作りは保持しないといけませんね。
 さて、今月のマンスリーニュースは、最近新聞紙上をにぎわせている結核の状況について考えてみたいと思います。

 結核症という病気

 結核症(結核)は、結核菌(ミコバクテリウム ツベルクローシス)という細菌の感染によっておこります。世界を見ると発展途中の国では、結核がなかなか減らない状況があり、中には増加している国もあります。先進国でも、科学療法の発達によって一時減少していたものが、そのままなくなってしまわずに再びぶり返して来ているということが大問題になりつつあります。
 日本は、平成五年の統計で、19万人の登録患者さんがいます。そのうち他の人に感染する可能性のある活動性結核の人は、7万人と言われます。また、最近の調査でも、年間4万人以上の新しい患者さんが登録されています。過去の病気ではないのです。

 小児結核の患者さん

 私が身近で経験した小児結核の患者さんは、1才前後の男の子でした。もう20年以上前のことですが、髄膜炎から脳炎を起こし、意識のない状態でした。この頃、結核はめったに見ない病気だったので、ウィルスあるいは細菌による脳炎として治療されていました。しかし、その後の検査で結核菌が見つかり、結核による髄膜脳炎と判明しました。主治医の先生は、一生懸命結核菌を見つけ、また治療に苦労されていました。しかし、男の子はそのまま意識が戻らず、後遺症として残ってしまいました。家族の中に結核の患者さんがいたことも分かりました。その体験は、結核の恐ろしさを教科書以上の確かさで認識させてくれました。

 子供の結核の特徴

 子供の結核は、特に乳幼児であるほど発病も早く重症化します。免疫の弱い状態に菌が入るので、菌が全身にばらまかれ、頭につくと結核性髄膜炎になり、肺につくと粟粒結核(胸のレントゲン写真をとると、肺全体に粟粒のような陰が見えます。)になります。「おたふくかぜ」の髄膜炎はほとんど後遺症を残しませんが、結核の場合はまったく異なります。ひどければ命を落とすことになりますが、命拾いをしても知能や運動機能の障害を残すことがほとんどです。
 また、子供の結核感染は、ほとんどが家族内感染です。お話しした患者さんもそうですが、家族に結核菌を排出する人がみつかります。

ツベルクリン反応とBCG

 平成6年6月に予防接種法の改正があり、BCG接種は努力義務になりました。初回は4歳までに行い、その後、小学校1年と中学1年に、ツ反陰性の人にBCG接種をします。現在、第1回の接種は、出来るだけ早く打ちたいので、市町村では、生後3ヶ月や9ヶ月に行われています。松任市では、生後3ヶ月に行っています。生後3ヶ月のツ反で陽性に出たときは、家族に結核がないかよく聞いておく必要があります。また、再度ツ反をして陰性か陽性かを確認しておきます。陰性の場合はBCG接種、陽性の場合は自然の結核菌が入ったとして、結核を発病させない薬を6ヶ月間内服します。
 小学校1年や中学校1年でも、活動性の結核患者さんと接触がありツ反陽性の場合、接触が無くてもツ反が強く陽性を示す(BCG未接種で)場合は結核菌が入ったとして、結核発病予防薬を内服します。

 過去の病気と思っていた結核は、こちらが油断している間に、いつの間にか勢いを吹き返しています。最近の集団感染はそのことを如実に物語っています。結核の始まりは、発熱、食欲不振、全身倦怠感、やせ、咳などの風邪に似た症状です。あるいは、症状も無く経過することもあります。おかしい、いつもと違うと思ったら、結核も疑ってください。早期発見が、子供達への感染を防ぐ最高の予防法です。
 また、医師も、結核を念頭に置いた診断を進めることが必要になっています。
       
   目次へもどる           次ページへ