ノロウィルスって何?

 あけまして
   おめでとう
     ございます

2005年、新しい年が始まりました。鶏年の始まりです。
 昨年末の最大の災害、新潟よりも更に大きな地震(スマトラ沖地震)は、東南アジア一帯に大きな被害をもたらしました。地震の揺れよりも津波が18万人もの命を奪うなんて本当に信じられません。現地から遠く離れた日本は、津波の被害は受けませんでしたが、観光客として現地を訪れていた人たちが少なからず犠牲になったようです。遺体が見つからずハッキリした人数は不明ですが、100人近くの数になりそうです。ご冥福をお祈り致します。
 受付に募金箱を置きましたので、よろしくお願いします。
 さて、新年のマンスリーニュースは、皆さんよくご存じの「ノロウィルス」の話題で行きましょう。

  ノロウィルスとは

 1968年、米国オハイオ州ノーウォークという町の小学校で集団発生した急性胃腸炎の患者の便からウィルスが検出され、発見された土地の名前からノーウォークウィルスと呼ばれました。4年後、電子顕微鏡でその形を調べてみると直径が38ナノメーターというウィルスの中でも小さく、球形をしていたので「小型球形ウィルス」の一種と考えられました。その後、非細菌性急性胃腸炎の患者さんからノーウォークウィルスに似た小型球形ウィルスが次々と発見されました。更に、ウィルスの遺伝子検査でこの小型ウィルスには2種類あることが判明しました。2002年8月、国際ウィルス学会で、胃腸炎のほとんどを起こす小型球形ウィルスを「ノロウィルス(Noro virus)」と命名しました。

  ノロウィルス感染症

 このウィルスの感染は、ほとんどが経口感染と言われています。汚染された二枚貝(とくにカキ貝、シジミ、ハマグリなどでも感染)を生や十分に加熱調理しないで食べたり、食べ物を扱っている人が感染していて、その人が作った物で感染したり、患者さんの便や吐いた物から感染したりします。二枚貝が起こしやすいのはたくさんの海水を濾過してウィルスを取り込むためと言われます。また、家庭や共同生活施設で、人同士接触する機会が多いところで人から人へ直接感染することもあると考えられています。
 潜伏期間は、24から48時間です。
 主な症状は、吐き気(78%)、嘔吐(77%)、下痢(84%)、腹痛で、発熱は軽度です。これらの症状が、1〜2日間続いた後後遺症もなく治っていきます。当院の外来でも、ノロウィルスによると思われる胃腸炎の子どもさんがたくさん来られますが、多くは数日で元気になってしまいます。近くの保育園や小学校でも集団でお休みということもありますが、中には症状がほとんど出ないで済んでしまっている場合もあるでしょう。高齢者で重症になると言うのが信じられないくらいです。

  高齢者施設での流行

 広島県福山市の特別養護老人ホーム「福山福寿園」で入所者7人が死亡したというショッキングな報道で始まりました。福山市保健所は9日、ウィルス検査を行った所、12人のうちの九人からノロウィルスを検出したと発表しました。県内でも辰口の老人施設で同様の流行があったことが新聞紙上をにぎわせました。死亡者は出なかったようですが、改めて身近に危険な病原体が潜んでいることにビックリされたことでしょう。
 しかし、このウィルスは突然出てきたものではなく毎年冬に流行する胃腸炎の原因としてとらえられていました。名前は「小型球形ウィルスによる食中毒」です。平成14年の食中毒の統計では、総件数1850件のうち268件(14.5%)、患者数では27000人のうち約8000人(29%)を占めていました。これはサルモネラ菌、キャンピロバクターについで発生件数が多く、患者数では第1位となっています。
 高齢者の場合、免疫力も低下していますし、他の病気も治療中ということが多いので、インフルエンザだけではなくノロウィルス感染にも弱くなっているのだと思います。下痢や吐き気などの症状が出たら乳幼児同様、脱水に気を付けて手早く対応する必要があります。

  診断と治療と予防

 症状だけからではノロウィルスの診断は出来ません。便には大量のウィルスが排泄されますから、そのウィルスを電子顕微鏡や遺伝子検査で調べて診断をつけます。(費用は16000円です。調べたい方はどうぞ))ワクチンは現在の所ありません。しかし、ノロウィルスの研究もどんどん進んでいますから、将来はワクチンが作られるでしょう。
 治療も特効薬はありません。休養と体外にウィルスを排泄して自然治癒を待つことです。強い下痢止めで下痢を完全に止めてしまうことは、体内にウィルスを残すことになりますからお勧めできません。下痢の飲み薬としては整腸剤(ラックBなど)で十分でしょう。吐き気が強いときには座薬の吐き気止め(ナウゼリン)を使います。この吐き気も、何回か吐くと収まってきますから、吐きたいときには吐かせてあげてください。これもウィルスを体外に出すための防衛反応です。下痢や吐き気が強いときには、点滴で水分を補給することも必要になります。下痢で水分を失っていても、口からその分の水分補給が出来れば点滴は必要ありません。
 さて、最後は予防です。ノロウィルスに汚染された食物を食べない。生のカキは特に危険です。ノロウィルスだけではなく、 A型肝炎の感染源でもあります。カキは十分加熱して食べましょう。また、患者さんからの感染を防ぐためには便や吐物の処理を的確にすることも大事です。手を洗いましょう。高齢者の施設などでは、職員が職場へ出る場合、症状が治まってから少なくとも2日間は自宅待機が理想です。ノロウィルスは、症状が治まってからも三週間ほどという論文もありますが、3日〜7日は排泄されています。自分がかかった時は、そのつもりで、他の人にうつさないような気配りが必要ですね。

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