ヒブ・ワクチンを接種しよう

 7月も半ばを過ぎてしまいました。北陸の梅雨明けはまだですが、気温は高いです。梅雨が明けたら相当熱い日が続きそうですね。
 さて、日本全国、新型インフルエンザが徐々にですが拡大しています。幸いなことに外国のように死者は出ていませんが、現在、県によって対応が違うようで、石川県では診断がついた段階で、保健所に届けるシステムになっています。また、濃厚接触者とその家族は活動が制限されています。白山市でも、近くの小学校、幼稚園で発生しました。症状は軽症なので、「そこまで必要かな」という気がします。
 さて、6月号のマンスリーニュースは「ヒブ・ワクチンを接種しよう」です。まだ公費補助のないワクチンですが、とても大事なワクチンです。

  ヒブ・ワクチンの復習

 平成18年10月号のマンスリーニュースに「ヒブ・ワクチンをご存じですか」というタイトルで特集しました。その中で、その頃遭遇したインフルエンザ菌による化膿性髄膜炎の患者さんのお話をお伝えしました。なかなか診断が難しく、お母さんの判断でどうにか手遅れにならないで済みましたが、手遅れになれば後遺症が残ったり、命を落とすこともある病気です。そのインフルエンザ菌の感染を予防するヒブ・ワクチンを日本でも早くやって欲しいというメッセージを伝えるマンスリーニュースでした。そのマンスリーニュースから一部分を引用して復習しましょう。「Hib〈ヒブ〉とは、インフルエンザ菌b型のことです。インフルエンザという名前が付いていますが、毎年冬に流行るインフルエンザウィルスとはまったく関係のない細菌です。たまたま、ウィルスの存在が知られていない1890年に、インフルエンザにかかった人の痰から見つかった細菌だったので、この名前が付けられ現在もインフルエンザ菌と呼ばれているのです。Hibは、子どもの鼻の奥やノドにすんでいます。時に髄膜炎や喉頭蓋炎を起こします。今回経験したのは、脳や脊髄に細菌が入り込んで起こる髄膜炎ですが、髄膜炎の内の2/3は、Hibによって起こります。日本では毎年5才以下の子ども達約600人がかかり、その内の半数以上が1才以下に集中しています。問題は、かかった子どもの15〜20%に後遺症(難聴やけいれん)が残り、5%は死亡するという事実です。つまり、20人に1人が死亡するのです。最近、この髄膜炎が増加していると言われています。また、抗生物質に効きにくいHibが増えているそうです。
喉頭蓋炎も怖い病気です。髄膜炎よりもまれですが、物を飲み込むときに気管にフタをする喉頭蓋がHib感染により急激に腫れて息が吸えなくなり、数時間で窒息してしまう病気です。これもHibワクチン接種で防げます。

  ヒブ・ワクチンが輸入され、
      接種出来るようになりました

 日本では、平成20年12月から任意接種可能となりましたが、実際に接種が出来るようになったのは、今年の6月頃からでした。また、ワクチンは日本製ではなく、フランスから輸入した物です。フランス製のワクチンは、注射器も小さく、日本人の手には持ちにくいですが、慣れたら大丈夫です。さすがデザイン重視のお国柄です。
 世界では1990年代からヒブ・ワクチンが欧米を中心に導入され、1998年WHOは乳児への定期接種を推奨する声明を出しました。すでにワクチンを施行している100カ国以上の世界の国々では、インフルエンザ菌髄膜炎は過去の病気なのです。この不満を金沢弁で叫ぶとこうなります。
  
「何で、ヒブ・ワクチンをせんがー?
      アジアでせんのは、日本と北朝鮮だけやがいやー」

 しかし、世界に比べると10年遅れましたが、日本でも希望者には接種出来るようになりました。それは喜びたいのですが、不満も残ります。乳児全員に無料で接種してくれれば最高ですが、現在のところ自費接種です(1回:7500円と高いです)。またフランスからの輸入品なので、一生懸命作ってくれているのですが、生産が追いつきません。医院に入ってくるワクチンは数も限られているので順番待ちです。
 接種年令は、生後2ヶ月以上になれば受けられます。望ましい接種スケジュールは、初回免疫として生後2ヶ月から7ヶ月になるまでに接種を開始し、4〜8週間間隔で3回、追加免疫として3回目接種から1年後に1回の合計4回接種します。合計4回接種を受けた人のほぼ100%に免疫が出来るため最適な予防プランとされています。生後7ヶ月から1才未満の場合は、4〜8週間間隔で2回、追加免疫として2回目接種から1年後に1回の合計3回接種となります。1才以上の場合は追加免疫はなく1回接種のみで抗体獲得となります。髄膜炎を起こしやすい、5才までは接種しておいた方が良いでしょう。
 最適な予防プランの費用は、7,500×4=3,0000円です。
 当院の場合は、定期のDPTワクチンに合わせて4〜8周間間隔で3回同時接種、1年後の追加免疫も同時接種します。同時接種は右手と左手に分けてします。将来、いろいろ混合したワクチンが出来れば痛い思いも少なくて済む時代が来るでしょう。また、子どもの予防接種は、すべて(おたふくかぜや、水痘も)公費で補助してくれる時代も来るでしょう。本当に豊かな国とは、弱い者が守られる国のことを言うのだと思いますが、老人や母子が気持ち安らかに生活できる国が、早くやってくることを願います。必要なワクチンを、欧米先進国並みに公費で接種することは、子どもの将来に不安を抱く親御さんへの、「子どもの命は国が守るよー」と言うメッセージであり、親の負担を軽くして、「次の子どもが欲しいね」という気持ちを抱かせる少子化対策でもあるのです。国の予防接種担当官の方々、宜しくお願いいたします。

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