子供の心の病気について


 最近、子供の心の病気が増えていると言われます。新聞誌上でも学校に行けない子供達の話題が良くみられます。どうして心の病気が増えているのでしょうか。私が3年前まで勤務していた医王病院でも、昭和59年頃から、心の病気を持った子供達の入院が増えてきました。学校に行けない子供。一言も話さない子供。おばあちゃんと同じ行動をとるようになってしまった子供。自然に声が出たり身体が動いてしまう子供。視力があっても学校の黒板が見えなくなってしまった子供。色々な心の表現をする、本当にたくさんの子供達に出会いました。でも、子供達は好きでそうしている訳ではないのです。そうしないと自分を守れないのです。みんな追い詰められていたのです。それは、あたかも地球上で起こる地震に似ています。地震は断層の弱い所にしわが寄る現象です。社会でも家庭でも弱い所にしわが寄ります。子供は社会でも家庭でも一番弱い存在なのです。

  心の病気は病気ではない

 心の病気を持った子供はどんな子供達なのでしょうか。彼らとの付き合いの中で、本当に優しい子供達だと感じました。優しさゆえに、親に気を使ってしまうのです。いい子になり過ぎてしまうのです。子どもらしさの表現である甘えやわがままを押さえてしまうのです。当然、心の中にはたくさんの物がたまってきます。でも言葉で表現出来ないのです。心の叫びが色々な表現となって現われるのです。ですから病気とは言えないかもしれません。医王病院で子供に戻った彼らは、みんなたくましく羽ばたいて行きました。少しばかり寄り道をしただけだったのです。

  一度は、やんちゃな時期がある    


 心の病気を持った子供を育てた親はなにか悪いところがあったのでしょうか。そんなことはないと思います。親も自分の出来る範囲で頑張ってきたのです。家庭で社会で、色々悩みながら子育てをしてきたのです。どうして自分の子供が学校へ行けなくなったのか分からないとよく言われます。私はそんなお父さん、お母さんによく言いました。子供の頃、やんちゃをしなかったから、今、やんちゃをこいているんですよと。遅れて来たやんちゃは少し頑固かもしれません。でもよみがえる為には必要なのです。

  生きることの楽しさを!


 心の病気の治療は、難しくありません。人間が信頼できること、そして、生きることが楽しいことをを教えてあげることが最高の治療法です。少しはつらいことも教えてあげてください。病院に入らなくても、家庭でそれを教えてあげられたら最高だと思います。そのためには親に少し余裕があったら子供達を見つめてあげてください。誕生日には大好きな食べ物を作ってあげてください。お祭りにはおこずかいをあげてください。良いことをしたらほめてあげてください。悪いことをしたら一生懸命しかってください。一つ一つの思い出が、生きるエネルギーになるのです。もうそれであなたのお子さんは、病院に入る必要はありません。一人でたくましく生きて行けると思います。

 
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