花粉症の季節です

 花粉症の季節になりました。石川県でも、3月初めから杉の花粉が飛び初めました。朝、何回もくしゃみが出る、透明な鼻水が出る、鼻がかゆい、鼻が詰まる、眼がかゆい、眼が赤い、また皮膚がかゆく、湿疹が出る等の皮膚症状、さらに咳が出る、精神的にイライラする、すべて花粉症の症状です。杉の花粉の飛散は、南の暖かい地方では、2月初めからはじまり、日本列島を北上して、5月頃まで続きます。この3か月間、飛び散る花粉の量によって、人によってその強さは違いますが、色々な症状を引き起こします。

 

 花粉症の歴史 

 百六十年前頃に、イギリスで夏に牧草にする枯れ草をあつかっていると、くしゃみ、鼻水、眼のかゆみが出て、しかも熱が少し出る症状が報告され、枯草熱(こそうねつ)と名付けられたのが最初です。
 日本では杉花粉症が有名ですが、昭和 38 年に栃木県日光地方で初めて報告されました。
 

 花粉症はどうしておこるのか 

 アレルギー体質のある人が、花粉を吸い込んでいるうちに、花粉と反応するものが身体のなかに出来てきます。再び花粉が鼻や眼、皮膚につくとそこで反応(アレルギー反応)が起こり、粘膜や皮膚にヒスタミンなどの化学物質が出ます。化学物質は、かゆみを起こしたり、分泌物を出させたりして色々な症状を引き起こします。ですから花粉が飛ばなくなると、症状は収まっていきます。
 

 松任の花粉症 

 当院でもくしゃみ、鼻水、眼のかゆみを訴えて来院される外来患者さんが増えてきました。杉花粉は、すでに飛び初めていますからそのための症状かもしれません。しかし、杉花粉症といわれて来院された患者さんを、皮膚反応や血液反応で調べてみると、杉よりもイネ科の花粉であるカモガヤに強い反応を示す人の方が多いようです。カモガヤは四月から十月頃まで花粉を飛ばします。松任は田園地帯ですから、杉よりもカモガヤの花粉に接する機会が多いためと思われます。
 

 花粉症の治療 

 アレルギー疾患の治療の原則は、原因となる物質(アレルゲン)と接触しないことです。花粉を吸い込まないことが出来れば、それが最高の治療法です。しかし息をしない訳にはいきませんから、吸入や接触を少しでも防ぐマスクや、眼にあてるゴーグルは、理屈に合った治療と言えます。普通は、マスクやゴーグルでは防ぎ切れないために、薬物療法を併用します。最近は効果のすぐれた点鼻薬や、眠気の少ない飲み薬が開発され利用されています。花粉の飛ぶ季節だけ吸入や内服を続けます。大事なことは症状が収まっても、期間中は症状を予防するために薬を続けることです。
 花粉症は増加していると言われます。戦後、大量に杉を植えたことも一つの原因かもしれません。またヂーゼルエンジンの粉塵が、花粉症を引き起こす誘因になっているという研究もあります。
 自然と人間の係わり合いも重要です。木々や草花は、いじめられると、種族保存のために、より多くの花粉を飛ばすと言われています。花粉症の増加は、自然破壊が進む現代社会に対する、一つの警告なのかもしれません。

 
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