当院近くの徳光海岸

  石川周産期フロンティア開催さる

 新しい年が明けたと思っている内に、すでに2月になってしまいました。外来は何となく風邪が流行りそうな気配です。インフルエンザの予防接種は受けましたか。それにしても、重油騒ぎに、新年の気分をさらわれてしまったような感じですね。徳光や倉部の海岸の重油はどうなのでしょうか。私も1月19日(日)に、毎年海水浴に出かける徳光海岸へ行ってみましたが、はっきりとした重油の影を見つけられませんでした。
(後から聞いた話では、この後流れ着いたようです。天の声:ボランティアに行って来なさい。・・・・ハイ)珠洲市は、被害が大きかったようですが、以前1年間住んでいて、海の美しさが印象的だった場所です。後遺症が少ないことを祈ります。
 さて、今月のマンスリーニュースは最近開かれた講演会からの話題です。
              
 2月1日の土曜日、金沢の全日空ホテルで、第1回目の「石川周産期フロンティア」という会合が開かれました。これまで無かったのが不思議ですが、産婦人科医、小児科医、小児外科医、看護婦、助産婦など子供の出生にかかわる医療関係者が一同に会して勉強する機会を作ったのです。
 出生前や出生時の障害が知能や運動発達に影響して、一生ハンディキャップを持って生きなければならないことが起こります。最近の周産期(出生前後)医学は随分進歩しましたが、それに伴って、極小未熟児(1500グラム未満)や超未熟児(1000グラム未満)が生存する機会も増えました。しかし、小さく生まれれば生まれるほど、何らかの障害を持つ可能性も増えます。やむなく未熟児が生まれる場合には、胎児の状態に応じた出生の準備と対応が必要になるわけです。この面で、日本の医療状況は充分とは言えません。「石川周産期フロンティア」の設立は、医療関係者間にある多くの垣根を取り払って、医療者が患者さんを取り囲むような真の医療の出発点になることが期待されます。
 会の最初は、県立病院や大学病院の小児科医、産婦人科医による「脳障害」についてのシンポジウムがありました。途中意識が混濁した時もありましたが、要約すれば、現在でも傷害を持つ子供達の数は減っていないということです。
 胎児も人間である
 続いて特別講演が始まりました。講師は九州大学産婦人科教授の中野仁雄先生です。先生は、以前から「胎児も人間である。」という考えのもとで医療に携わって来られたという座長の紹介にハッとしました。小児科医は、生まれてからが勝負という仕事ですからそう感じたのかもしれませんが、産婦人科の医師としては当然なのかもしれません。人間が子宮内に生を受け、いつから人間になるのか難しい問題です。超未熟児の医療が進歩したため、平成3年1月1日から、優性保護法が改正され、胎児が母体外で生きられる限界が、在胎 週から 週になりました。しかし、これが人間として認められる基準なのでしょうか。最近は、超音波診断が発達して、生まれる前から、胎児の動きを見られるようになりました。母として父として、この子の親になるんだと言う意識は生まれる前から準備されているわけです。私の経験では、母親のお腹を蹴り出したらすでに人間ですネ。
 中野先生は、その超音波の最新技術を使って、胎児の眼球や瞳の変化(動きや大きさ)、また男児ではペニスの勃起の様子をとらえ、胎児の神経の発達を評価する方法を明快に話されました。胎児も 週位になると、眠ったり起きたり、排尿したりという身体のリズムが出来上がっているそうです。また、胎児期の神経発達の異常をとらえることによって、出生後の精神運動発達の遅れも予測出来るようになるとのお話しでした。子供の発達異常が、婦人科医の処置の遅ればかりが指摘されて裁判になることも多いのですが、胎児期の何らかの異常が関係している可能性も見逃せません。先生のお話しを聞いて、子供の発達異常の真の原因は何かを探る一つの大きな進歩であることを認識しました。
 
 
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