インフルエンザワクチンを接種しよう

 朝晩の冷え込みが厳しくなって来るにつれて、風邪が流行だしました。また、喘息発作も増えています。それまで隠れていた発作が一斉に芽を吹き出した感じです。人間の身体は、どうしてこんなにも季節の変化に敏感なのでしょうか。

 さて今月のマンスリーニュースは、そろそろと忍び寄るインフルエンザについて再認識したいと思います。

 ワクチン接種の再開を!

 昨年 月のインフルエンザの流行は、当院が開業以来最大のものでした。この要因の一つとして、学校でのインフルエンザワクチン接種が廃止されたことがあげられます。それまでの接種で生徒の一割から二割しか接種しなかったので当然の流れとして廃止になってしまったのですが、その有効性についての宣伝が足りなかったのは医師と行政の責任でもあります。昨年度の流行中、松任でもインフルエンザ脳症と思われる症状で学童が死亡しました。小児科医としては、以前のように公費によるワクチン接種が再開されることを願わずにはいられません。

 海外のワクチン接種

 海外、特にヨーロッパでは、スペイン、フランス、スイス等多くの国々で、高齢の人たちや、他の病気を持っていて重症になりそうな人たち、また老人で施設に入っている人たちに接種を促す勧告が出され、国や社会保険による費用負担が行われています。日本では、昨年の流行時に、老人施設で多くの犠牲者が出たことは記憶に新しいところです。日本も諸外国に後れをとらないよう、一人の人間の命もおろそかにしないという観点から、保健行政を進めてほしいと思います。実際面に即しても、ワクチン接種は医療費削減につながることが指摘されています。

 インフルエンザ最新情報

 世界の専門家は、数年のうちに、以前流行したスペイン風邪やアジア風邪のような新型のインフルエンザが流行すると予測しています。タイミング良く今月のメディカル・トリビューン紙に、香港でインフルエンザの新株が出現したことが一面トップで報道されていました。それによるとこれまで人には感染しないと見られていたインフルエンザA 型ウィルスのH5N1株に、3才の男児が感染し死亡していたことが分かりました。国連の世界保健機構とアメリカの疾患管理センターは4人の専門家を派遣して調査を始めました。この H5N1株はアヒルやニワトリからはよく見つかるそうですが、人から発見されたのは初めてなのだそうです。この調査でウィルスに突然変異が見つかれば、人に感染して大流行を起こす可能性があるわけです。ウィルスが、人間が未体験の力を持っていれば、その力に勝つだけの免疫が無いのですからひとたまりもありません。

 わが国でも今年になって、8月をめどにこの問題が討議されたそうです。(未確認)日本医師会雑誌の9月号で武内氏は、新型インフルエンザが出現すれば、国民の4分の1が感染し、死者は10万人以上に上ると推定しています。

 ところでインフルエンザワクチンは効果があるの?

 日本では、いつの間にかインフルエンザワクチンが効かないという風評が接種率を下げ、廃止まで至ってしまいました。専門家の意見では、接種によって血中にウィルスを中和してくれる抗体が出来、その抗体が高ければ血液のなかのウィルスを殺し、脳炎や脳症を予防してくれることになります。ちなみに、インフルエンザワクチンの効果について今でも議論しているのは日本だけだそうです。

 今年のワクチン入荷

 松任市医師会では、インフルエンザ1回分の費用が三千五百円になっています。普通は1週間から4週間あけて2回打ちますから、合計で七千円です。家計にとって大きい出費です。しかし、合併症を起こして入院する事を考えれば安いといえるかもしれません。今年のワクチンは、春に流行した株をもとに冬の流行を予測して作られます。新型は出てきても2、3年後と言われています。少し猶予がありますが、ワクチン製造の拡充など早急の対策が望まれます。

 本来は、老人や乳幼児、また合併症を起こしやすいと思われる人たちには、公費で接種をすべきでしょう。専門家がワクチンの必要性を行政に訴えることも重要ですが、その前に行政自らが先を見た保健政策を国民に示してほしいものです。

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